水温は高め

今回は、函館水試金星丸による日本海スルメイカ調査の観測データも加えて作図しています。前回（4月）非常に優勢であった道西日本海の対馬暖流は、前回に引き続いて流量、水温とも平年より高く経過しています。200m層を見ると、積丹半島北西方沖43-45N、139-45E付近を中心に暖水渦があり、この暖水渦東方の43-45N、139-30E付近を中心に冷水渦があります。対馬暖流は青森県艫作崎沖、茂津多岬沖、積丹半島沖で西へやや蛇行しながら北上しています。水温は平年より高いところが多くなっています。特に、暖水渦の影響を受けた積丹半島西方の観測点J37（43-30N、139-20E、水温偏差表参照）では、50m層で4.0℃、100m層で3.6℃、200m層で1.9℃とそれぞれ平年より顕著に高くなっています。水温分布図では見えにくくなっていますが、松前西方の41-30N、139-50E付近には観測点が2点あります。この2点の東の陸側の観測点では、西の沖側より水温が低く（例えば100m層8℃以下）なっており、津軽海峡へ向かう南下流に伴って湧昇が発生していると考えられます。
余市における5月中旬以降6月中旬までの沿岸水温（旬平均）は、5月中旬に「非常に低い」となりましたが、5月下旬に「やや低い」となり、以降6月中旬まで「平年並み」で推移しています。

暖水塊そのまま

41-00N、145-30E付近に暖水塊の端が見えています（100m層で9℃以上）。衛星画像からこの暖水塊の中心部は　40-30N、145-30E付近にあり前回（4月）とほぼ同じ位置にあります。道東沿岸では50m層で2℃以下の沿岸親潮(*1)が断続的に見えており、親潮は襟裳岬南方から暖水塊と津軽暖流の間を南下しています。水温偏差についてみると、暖水塊の周辺で高くなっていますが、ほぼ平年並みの水温となっています。

津軽暖流系水広がる

道南太平洋沿岸域は、津軽暖流系水に広くおおわれ始めています。津軽暖流は渦モード(*2)ではありませんが、襟裳岬南西沖まで張り出して、親潮系水との間に水温フロントを形成しています。200m層をみると、尻屋崎東方に9℃以上の津軽暖流の渦があります。また、浦河沖でも200m層6℃以上の津軽暖流系水が見えています。噴火湾内の50m層では沿岸親潮水が5℃台となっています。水温偏差について見ると、水温偏差の高いところが多く、白老沖観測線では前回（4月）に引き続いて平年より2～3℃高いところがあります。津軽暖流の流量の指標となる深浦－函館間の水位差を見ると、3月以降5月まで低めに推移しており、津軽暖流流量は平年より少ないようです。

沖合冷水が接近

表面水温では知床半島まで10℃以上となっており、50m層も知床半島まで6℃以上となって宗谷暖流が順調に流れているようです。宗谷海峡東方に表面水温5℃以下の海域があり、サハリン西岸から連続する冷水帯と塩分値から判断しました。一方、枝幸沖にも表面水温で5℃以下の海域があり、これはオホーツク海の中冷水起源の冷水域でした。水温偏差についてみると、沖合表層で平年より高いところが見られますが、全体的には平年並みとなっています。宗谷暖流の流量の指標となる稚内－網走間の水位差を見ると、2月以降5月まで低めに推移しており、宗谷暖流流量は平年より少ないようです。

＊1：オホーツク海の海氷の融氷水を含む親潮として特に沿岸親潮という名前が付けられています。
＊2：津軽暖流が津軽海峡から襟裳岬まで大きく張り出してから南下している状態を「渦モード」と呼びます。これに対して，津軽暖流が青森県尻屋埼からすぐ岸沿いに三陸方面へ南下している状態を，津軽暖流の「沿岸モード」と呼んでいます。