胆振東部地震被災地における森林再生
2018年北海道胆振東部地震におけるこれまでの対応と研究成果
はじめに
2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生しました。この地震は、最大震度7を記録し、多くの被害をもたらしました。
林業試験場は、地震発生直後から現況把握に取り組み、被災森林の再生手法のサポートを行いました。

2018年9月11日撮影
被災直後の現地の様子

地震被害の概要
項目 | 内容 |
発生日 | 2018年9月6日 |
震源地 | 北海道胆振地方(安平町・厚真町・むかわ町) |
深さ | 37キロメートル |
マグニチュード | 6.7 |
最大震度 | 7(厚真町) |
被害 | 建物倒壊、地滑り、多数の死傷者 大規模地すべり(7,142ヶ所) |
森林被害 | 4,293ha(44.2㎢) |
影響 | 大規模な停電(ブラックアウト)、交通機関や通信網の混乱、道路や橋の損壊 |
初動対応(2018年10月〜2019年3月)

林業試験場では、まず、被災地全体の傾向を俯瞰する調査を行いました。航空写真や地形データを利用して、広域の傾向を把握するというものです。
次に、被災地全体からもう少しエリアを絞った、1-5haを対象とした調査を行いました。これは、地上での調査に加えて、無人航空機を用いた計測を行うことにより、1-5haの区域で発生した崩壊地の状態を、面的に、かつ詳細に把握する調査するものです。
さらに、土壌の性質の調査も行いました。今後、植物が育つためには、基盤となる土壌の硬さや水はけについて知る必要があります。崩壊地内において複数の計測地点を設け、土壌の物理性を計測しました。これらの調査により、倒木や地滑りの発生状況が詳しく記録され、復旧活動のための基礎データが収集されました。
参考資料
○2019年5月
・北海道(2019)北海道胆振東部地震による被災森林の再生に向けた対応方針 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/1/0/1/4/3/0/7/5/_/dai4kai_taiouhousin.pdf
・北海道(2021)胆振東部地震被災森林復旧指針(令和3年3月30日策定) https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/8/2/9/0/8/0/0/_/hukkyuusisinn.pdf
初動対応後の研究課題と成果
衛星画像、航空機レーザー、ドローンを活用して、森林被害の早期把握を行いました。広範囲にわたる被害状況を迅速に把握し、効果的な復旧計画の策定に役立てられました。
地震による斜面崩壊が多発した地域では、林業試験場は植栽試験を行いました。この試験では、崩壊斜面に適した植生を選定し、安定的な植生回復を図る技術を開発しました。
崩壊斜面において、自然に侵入してくる植物種を観察し、その効果を評価することで、自然再生力を活用した復旧方法の可能性を探りました。
2025年4月以降に進行中の研究課題をご紹介します。