試験研究は今 No.229「中央水産試験場に病理科新設」(1995年6月23日)
中央水産試験場に病理科新設
1.はじめに
海産魚貝類の病気の研究を行う病理科が6月1日付けで中央水産試験場に開設されました。そこで今回は病理科開設の目的と経緯、業務、研究設備、連絡体制について紹介します。
2.北海道の海産魚の栽培漁業について
海産魚類の栽培漁業の取り組みは、サケ・マス類と比べると開始時期が遅かったものの、ヒラメ、クロソイの人工種苗放流が昭和50年代に始まって以来、魚種、放流尾数とも次第に増えて、平成6年にはヒラメ48万5千尾、クロソイ12万8千尾をはじめ6魚種の人工種苗が放流されています。また、栽培漁業総合センターではマツカワ、マガレイ等新しい魚種の種苗生産技術開発に取り組んでおり、今後魚類の放流事業が幅広く展開されることになります。養殖もヒラメ、クロソイ等が各地で取り組まれてきています。
3.これまでの魚病の発生と対応について
北海道では海産魚(サケ・マス類を除く)の魚病被害は、種苗生産のとき以外では昭和59年までほとんど見られませんでした。しかし、昭和60年にヒラメで鰭や体が腐食する滑走細菌症が発生して以来、飼育尾数が増えるにつれて発生件数、種類とも増加し、現在では他府県で発生している病気の多くが北海道でも見られるようになりました。また、エゾバフンウニの斑点症やマツカワのVNN(ウイルス性神経壊死症)等、他では全く例のなかった病気も発生しています。
水産試験場では従来から急病の診断と対策を行える魚類防疫士を各試験場に配置して、魚病関係の業務に当たっていましたが、病気の診断法や治療法の技術開発、新しい魚病の原因究明の研究に関しては、設備や人員の関係で十分に行えませんでした。今回病理科の設置により、これらの課題に積極的に取り組んでいくことになります。
水産試験場では従来から急病の診断と対策を行える魚類防疫士を各試験場に配置して、魚病関係の業務に当たっていましたが、病気の診断法や治療法の技術開発、新しい魚病の原因究明の研究に関しては、設備や人員の関係で十分に行えませんでした。今回病理科の設置により、これらの課題に積極的に取り組んでいくことになります。
4.設備の概要について
中央水産試験場の新築に伴い、魚病研究関係の施設として、感染魚飼育室、微生物実験室、病理実験室などが新たに設けられたました。感染魚飼育室で使用された海水をオゾンで殺菌処理するなど、施設外への病原菌の拡散を防止しており、病魚の飼育試験が可能になりました。また、細菌培養施設のほか、無菌室、安全キャビネット、細胞破砕装置など、ウイルス培養に必要な設備も揃いました。さらに、VNNの遺伝子診断法を行うPCR(複製連鎖反応)装置も備わり、数多くの病気の診断が可能となりました。主な設備は表1の通りです。
5.業務内容について
病理科では次の業務を行います。
- 持ち込まれた海産魚の病魚の診断
- 魚病対策の指導
- 診断技術の開発
- 予防技術の開発
- 治療技術の開発
- 原因不明疾病の究明
6.連絡体制について
全道対応の組織(内水面、サケ・マス類は水産孵化場分担)として病理科が出来ましたが、スタートしたばかりで、全ての課題に対応できない場合も想定されます。現在準備を進めたところですが、積極的に対応していきたいと考えております。なお、当面の連絡方法はウニの連絡要領と同様の連絡・調査体制で対応していますので、近くの水産試験場、栽培センターに申しつけ下さい。(中央水試資源増殖部 三浦宏紀)
表 魚病関係設備の概要
実験室 | 設備 |
---|---|
感染魚飼育室 | 排水殺菌装置 2トン/時 |
オゾン処理循環飼育水槽 | |
給水系 調温海水 3系統 | |
無菌海水 | |
ろ過海水 | |
水温モニター | |
200リットル水槽 10基 | |
100リットル水槽 18基 | |
60リットル水槽 20基 | |
生物工学実験室 | 安全キャビネット |
超音波細胞破砕機 | |
無菌室 | |
恒温培養室 3 | |
低温恒温培養器 | |
超低温フリーザー | |
自動分注機 | |
自動希釈装置 | |
倒立顕微鏡 | |
PCR装置 | |
電気泳道装置 | |
紫外線発色装置 | |
低温恒温培養器 6台 | |
生物実験室 | 低温恒温培養器 6台 |
高速冷却遠心分離器 | |
ヘマトクリット遠心分離器 | |
クリーンベンチ | |
微分干渉顕微鏡 | |
実体顕微鏡 | |
顕微鏡カラーテレビ装置 | |
写真撮影装置 | |
超低温フリーザー | |
冷蔵庫 | |
超音波洗浄器 | |
電子上皿天秤 | |
高圧減菌器 | |
乾熱減菌器 | |
試験管洗浄器 | |
自動乾燥器 |