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稚内水産試験場

ニシン

分類

    • ニシン
学名:ニシン Clupea pallasii Valenciennes
英名:herring,Pacific herring
地方名(北海道):カド,カドイワシ
漢字:鰊,鯡,青魚,春告魚 

形態

体は細長く側扁(そくへん)する。下あごは上あごよりやや長く突出する。うろこは円鱗。側線は明瞭でない。背びれと腹びれは向かい合って位置し,ほぼ体の中央にある。尻びれと背びれは基底の長さがほぼ同長。体色は背側が青黒色で腹側は銀白色。近縁種のマイワシに良く似るが,ニシンの体側には黒青色点がない。大西洋のニシンClupea harengusとは近縁であるが種は異なる。

生態

ニシンの分布は太平洋からベーリング海峡を経て北極海に及び,最も西側では白海,バレンツ海南西部である。アメリカ側ではアラスカ湾からカリフォルニア半島のバサート岬,アジア側ではベーリング海からオホーツク海,日本海,黄海北部の渤海湾に分布する。我が国の太平洋側では犬吠埼付近が南限である。ニシンは産卵場や産卵期,成長,回遊範囲などが異なる多くの系群に分けられる。 石狩湾系群のニシン尾叉長は満1歳で15センチメートル,2歳で24センチメートル,3歳で27センチメートル,4歳以上で30センチメートル以上となる。多くの個体は1歳で成熟し始め,2歳直前の晩冬~春に初めて産卵する。産卵期は1月下旬~5月上旬。卵は顕花植物のスガモのほか,フシスジモク,スギモクなどの海藻に産み付けられる。産卵はほとんど水深1メートル以浅で行われる。

石狩湾系ニシンはあまり大きな回遊をしないとされるが,回遊経路や範囲については不明な点が多い。産卵場は石狩湾から宗谷湾にかけての日本海沿岸域に点在する。卵は受精後約1か月でふ化する。ふ化直後から6月ころまでの分布域は不明。石狩湾内の石狩川で行った調査結果では全長30ミリメートルになった稚魚が6月下旬から7月上旬にかけて河口近くの砂浜帯に出現し,そこに1~2週間とどまり,全長50ミリメートルに成長した個体から河川内や河口域に移動した。0歳の秋から1歳の秋までの分布や回遊は不明。1歳のニシンは秋から冬になると2歳以上の群とともに石狩湾から宗谷湾にかけての日本海側に出現する。この時の水深はほぼ200メートル以浅で,数メートル程度のごく浅い所で漁獲されることもある。1歳以上の成魚群は翌年の晩冬から春にかけて沿岸で産卵し,産卵後は再び沖合に移動する。沖合での分布や回遊経路は不明であるが,秋には再び沖合に出現し,翌年沿岸で産卵するというパターンを繰り返す。
    • 水揚げ
      留萌港での水揚げ風景
近年の漁業は1月下旬から2月に始まる。
かつてニシンといえば,「春を告げる魚」であったが,現在は厳冬期から漁業が行われている。

系群(けいぐん)

魚などの資源を考える際に資源変動の単位となる遺伝集団のことで,水産学において使用され、動物分類学でいう地域個体群(regional population)に相当する。「系統群」とも言う。日本海のニシンは同じような場所で産卵するが,系群毎に産卵の時期が異なり,同じニシンでも系群が異なるとそれぞれの系群間にまたがる子供は生まれない,つまり各集団間で遺伝子の交流がない,と考えられている(生殖的隔離という)。そのためニシン各系群は系群単位で資源が増減する。

やや正確さを欠くが,分かりやすく「日本人」と「アメリカ人」の例で考えてみよう。どちらも同じニンゲンであるが,住む地域が異なり,基本的にそれぞれの国における人口はもう一方の国の人口と関わりなく増減する。同じニンゲンなので,当然両者の間で子供はできるが,そうなる機会はそうそうあるわけではない。そのため,両者は遺伝的にも少し異なる特徴を持つ。例えば血液型で日本人は約40%がA型であるし,ネイティブ・アメリカンは80%以上がO型だそうである。ただ,こういった遺伝的な差異は,両者間で子供が作れないほどには違わない。これが子供が出来ないほどの遺伝的差異になると,両者は「別種」となる。ニシン系群も,別種ではないが遺伝的に違いが見られる集団といえる。

現在,北海道の日本海沿岸で産卵しているニシンは石狩湾系群かテルペニア系群であり(下図参照),そのほとんどは石狩湾系群である。過去に大量に漁獲されていたニシンは北海道・サハリン系群(春ニシン)であるが,現在この系群は北海道ではみられない。
    • 漁場と漁期
      北海道北部で漁獲されるニシンの漁場と主魚期

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