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林業試験場

北海道林業試験場研究報告-第41号-

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第41号(平成16年3月発行)

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木質チップ充填型側溝による浮遊土砂流出の抑制効果(PDF:5.53MB)
佐藤弘和・神田克明・藤八雅幸・新岡善宣・近 大輔・寺澤健治・野口稔弘
P1~14
本研究では,木質チップを充填材とした暗渠型側溝を施工し,路面から流れ込む浮遊土砂の濾過効果を検証した。北海道紋別市に位置する住友林業社有林内の作業道において,既設の明渠型側溝に木質チップ(または一部砂利)を充填し,暗渠型の側溝にした6区間と明渠区間(対照区間)を1区間それぞれ設定した。7区間について,横断暗渠管から流出する水量と微細土砂(粒径0.1mm以下)濃度の測定をそれぞれ行った。また,人工的に側溝に注水する試験を行い,暗渠と明渠の保水状況を確認した。一方,室内実験において,30cm厚のチップに人工濁水を流し込み,濾過材としてのチップの効果を検証した。幅員内に設置した側溝上を車両(間伐材積載時重量35.7トン)が通行できるかを検証するために,走行後の沈降量を測定し,あわせて濾過効果の持続性を評価した。
降雨時に排水される水量は,明渠区間の水量の20~40%であった。微細土砂濃度も同様に,明渠区間に比べて低下した。しかし,高濃度の微細土砂流出が起こるほど,濾過効果が減少する傾向が認められた。注水試験の結果では,明渠区間において注水量に対する排水量が73%を上回ったのに対して,暗渠型側溝では排水量が10%を超えなかった。室内実験では,投入した浮遊土砂量の83%が捕捉された。車両走行に対して,すべてチップで充填された区間の平均沈降量は11.2cmであったが,走行は可能であり濁水濾過効果は維持されていた。
木質チップを充填材とした暗渠型側溝は,濁水を濾過する効果があることが明らかとなった。

1997~2000年に北海道のトドマツ人工林で発生した異常な漏脂症状や枯損について(PDF:3.44MB)
原 秀穂・徳田佐和子・秋本正信
P15~25
北海道のトドマツ人工林(林齢19~38年)において1997~2000年の間に異常な漏脂症状や枯損被害が発生した。
激しい漏脂症状は上川・空知・後志・胆振・檜山地方で局所的に1997年から2000年に観察された。いくつかの林分では枯損被害が発生した。樹脂の漏出部位は,樹皮の亀裂,コキクイムシ類の穿孔痕,トドマツミキモグリガの穿孔痕,ナラタケ菌に関係すると考えられる幹地際の陥没部,あるいは明瞭な亀裂や穿孔痕がみられない樹皮であった。枯死木にはナラタケ菌がしばしば観察された。激しい漏脂症状や枯損被害は2000~2002年までにはほぼ終息した。
一方,漏脂症状を伴わない枯損被害が日高・釧路地方で1999年に発生した。枯死木にはたいていナラタケ菌が観察された。枯損被害は2000年にはほぼ終息した。

カスミザクラの開花特性(PDF:1.97MB)
脇田陽一・佐藤孝夫・滝谷美香
P26~32
カスミザクラは,道内では日高地方を中心に自生しているサクラで,公園などにもまれに植栽されているが,その特性はあまり知られていない。そこで,カスミザクラの開花特性について,2000年から2002年の3年間にわたり調査した。その結果,カスミザクラは,エゾヤマザクラに比べ,開花初日,満開日ともに2週間ほど遅く,エゾヤマザクラが落花し,葉ザクラになった頃に満開を迎えていることが明らかになった。また,カスミザクラの開花期間については,エゾヤマザクラと同様に,1~2週間程度で,最大開花数についても,個体間で著しい違いがあるものの,前年開花数が多いと,当年さらには翌年も多く,少ないものは少ないといった傾向が認められた。
さらに,開花特性調査の結果から,開花時期が非常に早い個体あるいは遅い個体,開花期間が非常に長い個体,開花数が3年通して多い個体等,緑化樹として観賞価値の高い優良個体19個体を選抜することができた。

北海道における緑化樹の地域適応性(PDF:8.80MB)
佐藤孝夫
P33~62
北海道は広大であり,地域によって気温,積雪量などの環境が大きく異なる。そのため,緑化樹の生育も地域によって大きく異なるが,これまでは緑化樹の地域適応性に関しては4つの区分(道央,道南,道北,道東)(北海道林務部 1982,北海道 1994など)だけであった。しかし,例えば道北と言ってもその地域は広く,環境が大きく異なっている。そのため,もっと詳しい適応性の解明が緑化関係者等から求められていた。
そこで,今回道内212市町村ごとに緑化樹の生育適応性について調べたので報告する。