水産研究本部

試験研究は今 No.373「海のミルクについて」(1999年2月5日)

海のミルクについて

はじめに

  カキは生鮮以外に、オイスターソースとして利用され、また「海のミルク」といわれるほど栄養満点なことで知られています。

  食品の品質には安全性、栄養性、機能性、貯蔵性、嗜好性などがあります。

  今回は厚岸産カキの機能性成分として亜鉛とタウリンを、また栄養成分ではグリコーゲンについて紹介します。

  なお、本試験は釧路東部地区水産技術普及指導所との共同で平成9年度水産試験研究プラザ関連事業として行ったものです。

亜鉛について

  亜鉛はヒトの体内に存在する金属としては鉄に次いで多く、筋肉、皮膚、骨、肝臓などの細胞に含まれています。

  亜鉛が欠乏すると、味覚障害を引き起こしたり、皮膚が角質化したり、傷口が治りにくくなったりします。さらに、性ホルモンの異常が起こり、生殖機能を低下させてしまいます。

  このように、亜鉛はヒトにとって大切な成分であり、1日に15ミリグラムを摂取することが望ましいとされています。

  亜鉛は、植物性食品よりも動物性食品に、肉類より魚介類に多く、なかでもカキには、季節変化があるとはいえ、最も多く、100グラム中に18~33ミリグラム含まれています。ですから、1日にカキ3~5個程度を食べるだけで、亜鉛の摂取は十分です。
    • 食品100g中の亜鉛
    • 図1

タウリンについて

図2
  タウリンはアミノ酸のひとつで、食品のなかでもカキ、ホタテガイ、ホッキガイなどの貝類、さらにイカ、タコなどに多く含まれています。

  身近なところでは、ときどきイカやタコの乾燥品の表面に白く粉のように折出しているのがタウリンで、またドリンク剤や粉ミルクにも添加されています。

  これは、ドリンク剤では滋養強壮、疲労回復の効果が、粉ミルクには母乳、とくに初乳のなかにタウリンが多量にあることがわかり、新生児の発育に欠かせないことから添加されています。その他に、タウリンの効能として以下の作用があるといわれています。
1.血液中のコレステロールの低下
2.血圧の降下
3.肝臓の解毒作用の向上
カキ100グラム中のタウリンは700(600~800)ミリグラムもあります。

グリコーゲンについて

図3
  われわれが、デンプンのような糖質を食べると、体内ではグリコーゲンに変えて貯蔵されます。そして、必要に応じてまた糖質にもどし、エネルギーとして使用されています。つまり、グリコーゲンを食物として摂取すると消化吸収がよく、これがカキを生食してもお腹にもたれない理由であるといわれています。

  カキのグリコーゲンは、季節によって変化が大きく、8,9月には低く、10月には6パーセントまで達します。

おわりに

  本道のカキの主産地はサロマ、厚岸、知内町ですが「種」はすべて宮城県産で、宮城県の漁模様に影響されている現状にあります。しかし、厚岸町では地場産の「種」を育てはじめ、徐々に軌道に乗りつつあります。今後は、他県との差別化を考えながら、栄養成分や機能性分等のデータの蓄積を通じて「本道のカキ」のイメージアップ(付加価値)を図りたいと思います。

(釧路水産試験場 利用部 辻 浩司)