道総研をフカボリ!農業研究本部

掲載データは令和3年4月1日時点のデータでの所属・研究内容であり、
現時点では変更となっている場合があります。

こんなシゴト、こんな研究。

安全でおいしい野菜や果実の栽培を支える
ミクロの世界の研究です。

中央農業試験場では、バイオテクノロジーやクリーン農業、有機農業、環境保全、品質評価などに関する研究のほか、水田・畑作・果樹に関する試験研究などを行っています。

私は帯広畜産大学在籍中から農作物の病害虫についての研究に取り組んでおり、道総研に所属してからは、ブロッコリー、アズキ、小麦、リンゴの特に「病害」についての研究を深めています。例えば近年、道央の複数の果樹園で〝リンゴ黒星病〟という病害が発生した際は、「どのような被害が起きているか」という状況の把握、「なぜ発生し多発したのか」という原因の究明、「どう対応すべきか」という対処法の検討、さらに「今後に向けどう防除するか」という薬剤の選定やその効果の検証まで幅広く探求し、現在も研究に取り組んでいます。

発生した被害を最低限に食い止めるだけでなく、病害の発生を察知したりその予防策にいち早く取り組むことも私に課された使命。菌類、細菌、ウイルスを封じ込めるための一進一退の攻防が続きますが、北海道の安全でおいしい農産物づくりには欠かせない研究!…と自分を鼓舞しながら頑張っています。

  • 森さんこんなシゴトこんな研究1
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ココでフカボリ!新発生の病害を見つけることも!

農家の方に「どうもウチのニンジンが変だ」という申し出を受け調査がスタート。けれど文献やデータを見ても前例がない…。これまで未報告の病害だったのです。なので、新発生報告のために実験を行い、「ニンジン葉腐病」と命名することができました。

私の「例えばの」一日

季節の移り変わりを感じながら…
の研究です。

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  • 森さん例えばの一日2
  • 森さん例えばの一日3

試験圃場やハウスでの病害の観察と研究室での検鏡やデータ分析などが私のルーティンです。
冬以外は野外作業も多く、春の芽吹きから開花、実りなどで季節の移り変わりを感じています。

8:45
出勤/メールチェック
9:30
ズーム会議
10:00
試験圃場で病害調査
12:00
お弁当タイム
13:00
試験圃場で農薬試験
15:00
病害の検鏡/データ入力
17:30
退所

ココでフカボリ!病害がたわわに実ってる?!

試験圃場やハウスではさまざまな野菜や果実を栽培しています。一見普通に育っているように見えますが、実はほとんどが病害に冒されているものばかり…(笑)。北海道で一番不健康な畑かもしれませんね(笑)。

上司からエール!

豊かな人間性と探究心を兼ね備える、
バランスの取れた研究者です。

道央圏に対応した農業の研究に取り組むのも中央農業試験場の大切な役割。この地域は果樹栽培も盛んなことから、果樹の病害虫に関する研究も進められています。その中心人物の一人が森さん。特に道産リンゴの病害の研究においては最先端にいると言っても過言ではないでしょう。管内で多発したリンゴ黒星病の防除のほか、つくばの農研機構での研修を糧にした農作物病害虫診断試験の取り組み、関係機関と連携した新たな病害の予防など成果や実績も素晴らしいものがあります。
これらの取り組みの根底にあるのが「地域の農家さんのために」というピュアな思い。豊かな人間性とあくなき探究心、その2つを兼ね備えた森さんの一層の活躍を期待しています。

なんでもQ&A

その質問、センパイが教えます。

行政から
転職した経緯は?
三重大学を卒業後、帯広畜産大学の大学院に進学し、在学中に釧路の農業改良普及センターに就職。道職員として、主に飼養管理の仕事などに取り組みました。大学時代に心血を注いだ農産物の病害虫研究の奥深さが忘れられず、仕事をしながら学校に通うという二足のわらじ生活を続けました。
大学院卒業後も一年ほど行政の仕事を続けましたが、研究したいという気持ちが揺らぐことはなく、意を決して病害虫研究のオーソリティを目指せる道総研に転職させていただいたわけです。
道総研の研究の
醍醐味って?
ズバリ成果がすぐに現場に届くこと。例えば私が研究している野菜や果樹の病害の研究でも、病害に効果のある薬剤はもちろん、今後発生が予想される病害や予防策など、さまざまな研究成果や情報がダイレクトに農業の現場にフィードバックされています。この速やかな連携が、安全な農作物の栽培や安定的な収穫、地域の農業経営の発展にも繋がっているわけです。
逆に農家さんから課題が寄せられるのもリアルタイム。研究室と畑の距離の近さがこの仕事の醍醐味を生み出していると思いますね。
女性であることの
ハンデはありますか?
全くありません!研究者はおだやかな人が多いからなのか、 人間関係もとてもいいです。
「自分の研究を管理するのは自分」という風土が根付いているため、責任を感じる一方、やりがいも大きいですね。時短勤務やフレックスなども活用できるほか、子育てや介護などへの理解も深く、むしろ女性がとっても働きやすい職場だと感じています。ちなみに私が所属している職場も約1/3が女性です。
これからの
研究者に必要なのは?
広い視野と好奇心かな。自分は農業の研究者だから農業に関することだけ詳しければいい…という考え方は前時代的。例えばドローンの活用法を習得すればより俯瞰的な視点での研究が可能になりますし、最新の画像解析技術を学べば従来とは全く違った研究成果を得られるかもしれない。
新しいパソコンのソフト、話題のスマホのアプリ、他の分野の研究者とのコネクション…いろいろなことに興味や関心を持ち、広い視野と見識を養った研究者が活躍していくと思います。

道総研のココがいい!

研究の最先端にふれ、
知識や技術をさらに深化させる
海外・国内研修制度。

最新の技術や高度な知識を習得したり、研究のネットワークを拡大していくために海外・国内の研究機関、民間企業や学会へ研究者を派遣しているのが、道総研の海外・国内研修制度です。
私も2018年にこの制度を活用し、農業・食品産業技術総合研究機構という国の研究機関にて三ヶ月ほどの研修に参加しました。習得したのは病害研究の要となる「菌類の同定(菌の分類上の所属を決定する取り組み)」の技術。最先端の知識や実験法を習得できただけでなく新しい人脈づくりも果たせるなど、本当に貴重な経験となりました。

農業研究本部 森万菜実の画像