道総研をフカボリ!水産研究本部

掲載データは令和3年4月1日時点のデータでの所属・研究内容であり、
現時点では変更となっている場合があります。

こんなシゴト、こんな研究。

ホタテの個体数の変化や行動範囲を追求し、
安定的な漁獲の実現に貢献しています。

中央水産試験場では、水産資源の管理や魚類の増殖、水産資源の加工利用技術の開発のほか、磯焼け漁場の有効利用技術などに関する試験研究にも取り組んでいます。
その中で私はオホーツク海や根室海峡を拠点に、放流ホタテガイの海底における生息状況の調査や海底での行動追跡などを行っています。一度に放流されるホタテガイの稚貝の数はまさに億単位。その2~4年後に大きく育ったものを漁獲するのが通例なのですが、実は成長の過程においてヒトデに食べられたり、爆弾低気圧などが原因で死んでしまう個体も多いのです。

そこで実際に漁場に出向きホタテガイの個体数の変化を把握することで、実際に漁獲できるホタテガイの個体数を導きだしたり、行動範囲を探ることで放流に適したエリアを特定するなどの研究が必要となってくるわけです。
また死因やその対処法をさらに深く追求し、放流したホタテガイの生存率を高めることも研究テーマの一つです。

北海道の農水産物の輸出量NO.1がホタテ。自分の研究が放流ホタテ漁の安定化や道内水産業の発展に貢献していると思うと、大きなやりがいとともに身が引き締まる思いも感じています。

  • 三好さんこんなシゴトこんな研究1
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ココでフカボリ!海底を走るソリカメラ?

海底の様子を把握するのに欠かせないのが、漁師さんのアドバイスをもとに改良した「海底画像撮影装置」です。水中カメラを搭載した『ソリ』を海底に沈め、それを漁船がロープで引っ張ることでうす暗い海底でもホタテの生息の状況をリアルに観察することができます。このように研究のための道具や機器を制作するのも、研究者の仕事なのです。また、撮影した映像からホタテガイを自動的に検出する技術も工業試験場や大学など産学官連携で開発しています。

私の「例えばの」一日

漁師の皆さんと一緒に、
沖合へ調査に向かうことも。

  • 三好さん例えばの一日1
  • 三好さん例えばの一日2
  • 三好さん例えばの一日3

夏場はオホーツクや根室エリアに出向き、
漁業関係者と漁船で調査に出かけることが多い一方、
流氷に閉ざされる冬場はデータ分析や実験などの仕事が中心となります。

8:30
出勤
9:00
漁船に乗り沖合で調査活動
12:00
港でお弁当
13:00
撮影動画の分析(生息状況の把握)
15:00
地元の漁師さんからの相談
17:30
退所

ココでフカボリ!会話の中に謎を解く鍵が・・・

一人でできる研究には限界があります。漁師さんや漁協の方々からの生の意見や現場ならではの提案で謎が解けたり、成果に結びつくことも日常茶飯事。研究者にもコミュニケーション能力は必須です。

上司からエール!

コネクションを広げることにも才能を発揮。
道総研の次代を担う〝開かれた研究者〟だと思います。

彼を一言で表すなら、〝アグレッシブな研究者〟。水産の現場に何度となく足を運び自ら課題を見つけ出すだけではなく、大学の先生、漁業関係者、民間企業さらに行政にまでコネクションを広げ、多方面からの意見や提案を吸い上げながら、課題解決のために奔走しています。もちろん成果をいち早く論文にまとめ各方面に発信したり、漁師の皆さんへの速やかなフィードバックも怠りません。
研究に没頭するあまり自分の世界に閉じこもってしまう研究者もいる中、常にオープンなスタンスでさまざまな方と信頼関係を築いていく彼は、次世代の研究者のシンボル。ますますの活躍を期待しています。

なんでもQ&A

その質問、センパイが教えます。

大学・大学院では
どのような研究を?
幼い頃から釣りが好きで、将来は水産系の研究者になろうと決めていました。高校卒業後は東海大学海洋学部に進学、大学では東南アジアなどを舞台とした鯉の養殖の研究に、大学院では回遊後のサケの行動追跡の研究に取り組みました。特に故郷の川を遡上するサケの調査はとても興味深く卒業後も取り組みたいテーマでしたが、道総研に所属しホタテガイの研究の担当になるやいなや、今度はこの分野の研究の面白さにどっぷりはまり込んでしまいました(笑)。
道総研に
就職した理由は?
海洋や水産に関する研究においては、道総研にはレベルの高い先輩研究者が多かったからです。さらに地元北海道の水産業界への貢献度が高く、大きなやりがいを味わえるのではと考え、就活は道総研一筋でした。なので採用された時は心底ホッとしました(笑)。
実際、自分の研究成果が漁や加工の現場で実際に活かされているのを見た時はやりがいを感じますし、漁師さんから感謝の言葉などを頂いた時はモチベーションも上がります。人に喜ばれるのがうれしい…のは研究者も同じなんです。
どんな人が
道総研に向いている?
水産試験場の場合、何より不可欠なのは「生きものが好き」という好奇心だと思います。また漁業者や水産加工業者などから寄せられる課題に取り組むことも多いため、自分の虚栄心や満足のためではなく、道内の漁業や水産業界全体を支えるためという熱意も必要になってきます。
研究とは『現状の課題の解決』と思いがちですが、時には将来の望ましい姿を想定し『未来を起点に現在の課題を見つけ出す』といった考え方を取り入れることも大切。常識の枠に凝り固まらない、広い視野と旺盛な好奇心を持つ方に仲間になってほしいですね。
これからの
研究テーマは?
道総研には、北海道の産業や暮らしに関するさまざまな研究課題が舞い込んできます。自分も8年にわたり放流ホタテガイの研究に取り組んできましたが、そろそろこの研究に関するノウハウを民間企業等にお渡しし、新たなテーマへと移行する時期を迎えているところです。
次の課題はホタテガイの外敵のヒトデの食害低減や、ドローンを活用したコンブやウニの生息状況の調査です。ヒトデは海の厄介者というイメージがありますが、ヒトデのいない海域にはホタテも育たないという奇妙な謎も…。そのあたりの解明が楽しみです。

道総研のココがいい!

育児休業を男性でも気兼ねなく
取得できる環境。
プライベートを支える
各種制度が充実しています。

2019年9月に第一子が生まれその直後に40日間ほど育児休業を取得しました。当時は網走勤務。私や妻の親にサポートを頼むのも難しかったため、妻のケアや赤ちゃんの世話、家事などの時間をたっぷり取れる育休は大変ありがたかったです。また国の雇用保険から「育児休業給付金」も支給されたので収入的に困ることもありませんでした。
男性の育休は申請しづらい、ということをよく耳にしますが、道総研ではそんな風潮は全くありません。有給も毎年ほぼ使い切っていますし、事前に申請すれば在宅勤務も認めてもらえます。すばらしい研究成果は、満ち足りたプライベートがあってこそ。後輩たちにも多様な福利厚生をぜひ活用してもらいたいです。

水産研究本部 三好晃治の画像