水産研究本部

試験研究は今 No.675「平成22年のオホーツク海ケガニ資源調査(密度調査)結果について」(2010年10月18日)

はじめに

 ケガニは北海道を代表する味覚の一つです。近年の全道におけるケガニ漁獲量は2千トン前後ですが、毎年そのうちほぼ50パーセント以上をオホーツク海の漁獲量が占めています(図1)。
    • 図1
 ケガニかご漁業は許容漁獲量制度という公的な漁獲制限を行って資源管理を行っています。オホーツク海海域では、毎年の許容漁獲量を算定する基礎となる調査を「密度調査」と呼んでいます。図2に密度調査点を示しました。調査は毎年1回行い、調査点は全部で115点で、調査用のケガニかごを使った漁獲調査を行います。
    • 図2
      図2 オホーツク海におけるケガニ資源密度調査の調査点図

 話は少しそれますが、密度調査では、調査点によって調査を手伝ってもらう漁師さんから、「ここでやっても(いないから)捕れないよ。何で獲れない所でやるの?」と毎年のように言われる点もあります。ここで調査点図を再度見て下さい。調査点はケガニの分布範囲全体を網羅する形で、空間的になるべく均等になるよう配置しています。我々としては、毎年決まった点で調査を行うことで海域全体の資源分布を判断する必要があります。そのためケガニがたくさん漁獲される点だけで資源量を判断するわけではないのです。しかし、この調査の結果が翌年の許容漁獲量決定に直接的に左右するため、漁獲の少ない調査点は不満も高く、その都度説明はするのですが納得してもらえないことも・・・。とにかく漁師さんの関心が高く、その結果にもなかなか厳しい目が向けられる調査です。
 

調査結果の概要

  さて、今年も例年同様に調査が行われ、調査結果がまとまりました。図3に毎年の密度調査結果を示しました。グラフの縦軸は資源量指数となっています。資源量指数を大雑把に説明すると、調査点毎の7センチメートル以上の雄の漁獲量(調査カゴ100かご当たり)を調査点付近の海域面積で引き延ばし、全点合計したものです。ここでは単純に資源量指数が高いほど資源は多いと考えて下さい。
 北海道ではケガニは甲長8センチメートル以上の雄しか漁獲が出来ません。そのため8センチメートル以上の雄の資源状態を評価するのですが、当海域では調査を漁期終盤から漁期後の6~8月頃に行い、その結果を翌年3月からの漁期(漁期はおよそ3~8月)に当てはめます。調査時に7センチメートル台である雄は翌年脱皮して8センチメートル台となるため、ここでは7センチメートル以上雄を漁獲対象資源として表しています。

    • 図3、図4、図5

 最近年の甲長7センチメートル以上の雄の資源量指数は平成17年をピークに平成21年まで減少傾向にありましたが、平成22年は前年より若干増加しました。過去20年の資源量指数の平均値±平均値の40パーセント値の範囲を中水準、その上下をそれぞれ高水準・低水準とすると、平成17~20年に中水準を維持していた資源は、平成21年には低水準となってしまいました。これは平成16年以来5年振りのことで、平成22年も資源水準はまだ低水準でした。

 図4に甲長8センチメートル以上の雄ガニ、図5に甲長7センチメートル台の雄ガニの資源量指数を分離してそれぞれ示しました。これらの図をみると、8センチメートル以上の雄ガニは平成17年以降減少しながらも何とか中水準で留まっていた一方、7センチメートル台では平成18年から連続して低水準で、さらに減少傾向が続いた事が分かります。7センチメートル台のカニは新規加入群と呼ばれる初めて漁獲対象に加入してきた資源ですから、まだ調査をした年では漁獲(漁業)の影響は受けていません。このことから、近年の資源の減少傾向は、漁獲の影響というよりは低水準の新規加入が続いたためではないかと考えています。平成22年の調査結果では7センチメートル台、8センチメートル以上ともに減少傾向は下げ止まった感があります。また、今回は示しませんでしたが、7センチメートル未満の雄ガニの資源量指数も前年より増加しており、資源状況はまだまだ厳しい面がありますが、再来年以降に向けて好材料もみられました。
 

 残念ながら近年の資源状態は余り良くなかったため、現状では資源をできるだけ減少させない形で、加入が好転するまで上手に利用していく必要があります(もちろん、好転しても上手に利用する必要はありますが)。そのため今後ともより良い資源の利用方法について漁業者の皆様と相談しながら管理を進めて行きますので、ご理解とご協力をよろしくお願い致します。
 

(網走水産試験場 調査研究部 田中伸幸)

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