水産研究本部

試験研究は今 No.658「マナマコ研究最前線~画像解析による非破壊的マナマコ資源量調査」(2010年02月01日)

試験研究は今 No.658「マナマコ研究最前線—画像解析による非破壊的マナマコ資源量調査」(2010年02月01日)

マナマコ研究最前線—画像解析による非破壊的マナマコ資源量調査

平成19年度から始まった農林水産技術会議の「乾燥ナマコ輸出のための計画的生産技術の開発」も3年計画の最終年度を迎えました。これまでも「試験研究は今」(No.624マナマコ研究最前線—マイクロキューブを使って海底地形図作成してみました!)、「北水試だより」(77号 画像解析によるマナマコの資源量推定技術開発—先進的な資源管理技術を目指して—)誌上で調査の中間結果を報告してきました。

今回はその集大成として、雄武町枝枝幸(えだえさし)沖に800,000平方メートル(1,000メートル×800メートル)の調査区を設定し、同海域の資源量調査を実施しましたので、その成果を報告します。

調査区内は60,000平方メートル(200メートル×300メートル)の5小海区と50,000平方メートル(200メートル×250メートル)の10小海区の合計15小海区に分割し、小海区ごとに潜水による幅1メートル、距離100メートルのライントランセクト法で、マナマコ計数とビデオ、写真撮影を実施しました。同時に調査ラインの始点と終点を浮玉で確認し、洋上でGPS測位を行いました。撮影後のビデオ画像はムーフィックス処理(株式会社エマキによる動画からの静止画作成技術。北水試だより77号参照)を行いました(図1)。
    • 図1
      図1 同ラインの作成画像例

      上:ムーフィックス画像 下:連結写真画像

  同時に、マイクロキューブ(魚群探知機の水深測定情報とGPSによる位置情報を同時記録する機材。試験研究は今No.624参照)水深測量データから、クリギング法などの数値補完法により調査区内の海底地形図を作成しました。
3年間の調査の結果、ナマコ桁網調査の桁効率に相当する画像からのマナマコ検出率はムーフィックス画像では0.45、写真画像では0.78であり、この係数を資源量推定に使用しました。

  両マナマコ検出率は1994年に宗谷海域岩礁域のナマコ漁場調査時の密度から計算した桁効率0.05~0.09(ただし体長70ミリメートル未満も含む)と比較して極めて効率的です。

  潜水計数値を基準に推定個体数の精度を比較すると、ランダム抽出法より層別抽出法を組み合わせたほうが好成績でした。最良の調査精度はムーフィックス画像では0.130、写真画像では0.117でした。図2は本調査の手順を整理したフローチャートです。

  画像計数値の場合、潜水計数値より小さく、推定精度は劣ります。しかしながら画像計数値と潜水計数値からそれぞれ算出した推定個体数間には統計的に有意な差が認めらません。このことが示すのは、画像計数値からの推定個体数は、潜水計数の結果と同等に扱って差し支えないということです。

  このように画像解析による資源量調査法は、桁網漁獲調査に変わる非破壊的資源量推定法として漁業現場に応用可能な代替技術として有望視されます。
    • 図2
      図2 画像解析によるナマコ資源量調査手順
(網走水産試験場 調査研究部 桒原 康裕)

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