水産研究本部

試験研究は今 No.665「マガレイをご当地グルメに!」(2010年05月21日)

はじめに

  平成22年2月21~26日に紋別市で開催された第25回北方圏国際シンポジウム「オホーツク海と流氷」の中で、24日に一般市民を対象とした公開講座「ふるさとの海」が行われました。第一部は「オホーツクの海と水産」、第二部は「流氷の海の生きものたち」と題して講演が行われました。第一部は伝統あるマガレイ漁の歴史と高付加価値化への取り組みについての講演でした。まず、北海道文化財保護協会の山田氏が「もんべつマガレイ」の歴史と最近の市場動向について紹介し、魚をおろす人が減少していることや子供は魚が嫌いなのではなく、骨を嫌がっているだけという現状が報告されました。もう一題は網走水産試験場からで、平成19~21年度に行われた試験研究「オホーツク海産マガレイの高付加価値化試験」の結果とご当地グルメの提案を行いましたので報告します。

活け締め

  活け締めについては、前号(No.664)で紹介されていますが、マガレイも活け締めをすることにより、透明感のある肉色になりました。また、蓄養して安静にした後、活け締めをして、保存温度を5℃にすると死後硬直やK値(値が低いほど鮮度がよい)の上昇を遅らせ、鮮度保持に効果的でした(図1)。 

ヌメリ取り

  カレイ類を処理する際には体表のヌメリが厄介です。ヌメリ取りの試験を行った結果、1%酢酸(家庭では4倍に薄めた酢)に5分漬けると、ヌメリは白く浮き上がり、水でヌメリを洗い落とせることがわかりました。

冷凍すり身

  冷凍したマガレイの肉から蒲鉾を作ると、冷凍変性のため、蒲鉾の物性(硬さやしなやかさ)が失われますが、鮮魚から糖を添加したすり身を作ると長期間の凍結が可能でした(図2)。すり身の製造では、水晒しによって蒲鉾の物性が改善し、魚臭さが減少しました。1回の水晒しによってスケトウダラ冷凍すり身と同等品質の冷凍すり身の製造が可能であり、蒲鉾製造業者からは、蒲鉾原料として十分利用できるという評価をいただきました(図3)。マガレイの味のする蒲鉾でご当地グルメはいかがでしょうか。

フィッシュブロック

  5枚卸にしたマガレイを5パーセントの塩水に5分浸漬します。脱水後、肉を重ねて並べ、重しをのせて一晩置き、凍結します。凍結したまま適当な大きさに切断し、冷凍食品用の衣をつけて、凍結し、冷凍食品(フライ)の完成です。油で揚げてフィッシュバーガーにしてみました(図4)。冷凍食品にすると漁のできない流氷観光シーズンでも観光客に地元の魚を食べてもらえます。ご当地グルメにマガレイバーガーはいかがでしょうか。

おわりに

  講演終了後はたくさんの方々から質問を受け、興味を持っていただけました。最近はご当地グルメやB級グルメが各地で話題になっています。マガレイもその1つに仲間入りできるよう、今後も普及、指導に努めていきたいと思います。興味のある方はぜひご連絡をお待ちしています。
    • 図1
      図1 マガレイの活け締め後の保存温度別硬直指数とK値の変化
硬直指数:魚の死後、筋肉が硬直し、その後は時間の経過とともに軟化するため、その硬直の度合いが鮮度指標となる。
K値:鮮度の指標の 1 つで低いほど鮮度がよい。例えば刺身は 20%以下。
    • 図2
      図2 凍結貯蔵後のマガレイ蒲鉾の破断強度
    • 図3
      水晒し回数によるマガレイ蒲鉾の破断凹み
破断強度:冷凍すり身の品質検査基準の1つ。直径 5mm の球を蒲鉾に押し込み、破断した時の力。硬さを表す。
破断凹み:破断強度測定時に蒲鉾が破断されるまでの距離。弾力を表し、大きいほど良い。
    • マガレイの冷凍食品(フィッシュブロック)
 (網走水産試験場 加工利用部 宮崎亜希子)

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