水産研究本部

試験研究は今 No.657「チヂミコンブのフコイダン含量について」(2010年01月13日)

はじめに

  チヂミコンブは、リシリコンブの分布域とほぼ重なる北海道北部の沿岸に生育しています。チヂミコンブには、抗ガン作用や血圧降下作用などを持つといわれている「フコイダン」が含まれており、近年、健康食品素材としての需要が増大しています。その一方で、その漁獲は主に天然の「拾いコンブ」に頼っているため、漁業者からはチヂミコンブの養殖技術の開発に期待が高まっています。

  中央水産試験場加工利用部では、平成20年度から稚内水産試験場資源増殖部と共同で「チヂミコンブの養殖技術開発試験」を実施しており、その中でチヂミコンブの原料特性について検討を行っています。今回は、天然および養殖チヂミコンブのフコイダン含量について得られた結果をご紹介します。

天然チヂミコンブのフコイダン含量の時期別及び産地別比較

  天然チヂミコンブのフコイダン含量の時期別変化について、平成20年4月~12月および平成21年3月~7月に稚内市宗谷で採取された試料を用いて調べました。フコイダン含量は平成20年産が4.1~5.8パーセント、平成21年産が3.8~4.3パーセントで、採取年次や時期による差が若干みられましたが、概ね4パーセント以上でした(図1)。

  北海道北部における平成21年度夏季の天然チヂミコンブのフコイダン含量を産地別に比較しました。フコイダン含量は3.6~4.1パーセントで、産地間で殆ど差が認められませんでした(図2)。
    • 図1、図2

養殖チヂミコンブのフコイダン含量

図3
  養殖チヂミコンブのフコイダン含量を調べ、天然ものと比較しました。分析試料には、平成21年4月~8月に利尻富士町鬼脇で採取された養殖促成ものおよび養殖2年ものを用い、平成21年3月~7月に稚内市宗谷で採取された天然ものと比較しました。養殖促成もののフコイダン含量は、4月では1.7パーセントで、天然ものに比べて低めでしたが、その後は増加して8月には3.7パーセントとなりました。一方、養殖2年もののフコイダン含量は、天然ものと同程度かやや高めであり、3.9~5.5パーセントでした(図3)。

チヂミコンブと他の海藻とのフコイダン含量の比較

  夏季のチヂミコンブのフコイダン含量について、その含量が多いとされるワカメ芽株やガゴメコンブおよび北海道北部に生育する他の海藻と比較しました。分析試料について表1に示します。チヂミコンブのフコイダン含量は天然ものおよび養殖ものとも、他の海藻と比べて同程度か高めでした(図4)。
    • 表1、図4

おわりに

  以上の結果から、チヂミコンブは天然ものおよび養殖ものとも、機能性成分の一つといわれているフコイダンを比較的多く含むことが分かりました。今後、さらにチヂミコンブの原料特性に関するデータの蓄積を図り、成分的優位性をより発揮できる養殖方法や採取時期を明らかにしていくことにより、チヂミコンブが北海道北部の新たな地域特産品としての知名度向上や新製品開発の活用につながっていくことが期待されます。

(中央水産試験場 加工利用部 小玉 裕幸、福士 暁彦)

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