水産研究本部

試験研究は今 No.369「日高沿岸の濁りとコンブについて」(1998年12月18日)

日高沿岸の濁りとコンブについて

はじめに

  日高地区では、降雨時に河川からの大量の泥流が沿岸域に流れ込み、またこの泥が時化等により再懸濁し、いつも濁りがひどくなっている状態です。この濁りがコンブの着生や実入りに影響があるのではないかと懸念されています。

  そこで濁りの程度とコンブヘの影響についてブラザ関連調査研究事業で実施しましたので概要についてお知らせします。

調査方法

  調査は濁りのひどい日高西部(門別)地区と濁りの少ない東部、(冬島)地区を設定し、4月~8月までの5ケ月間実施しました。

  環境調査は毎月1回水温、塩分、濁度の測定、また6月には水中光量を測定しました。

  コンブたついてはこの期間内の生長量を測ってみました。方法は各地区で採取したコンブに葉体基部から30センチメートル,50センチメートル,100センチメートルの所に穴をあけて5カ月後にその長さを測定しました。また水深2メートル,4メートル,6メートルで坪刈りし、着生本数、実入り状況を調査しました。

調査結集

(1)環境調査
  水温、塩分については両地区ほとんど同じ様な傾向でしたが、濁度(海水の濁り)では大きな差が見られました。門別
地区は7~30ppmの範囲で推移しており、冬島地区(1~3ppm)に比べ5~10倍程度の濁りの量でした(図1)。

  6月調査時の水深別濁度と水中光量(減少率)を図2,3に示しました。濁度は門別地区が10.5~19.0ppmの範囲でしたが、冬島地区では1.9~3.4ppmと5倍程の差になっていました。この濁りによって水中光量の減少率が大きく変わっていると思います。門別では、水中光量は水面上た比較して水深1メートルでは25パーセント、3メートルで10パーセント5メートルで3パーセントまで減少しています。冬島では、それぞれ68パーセント、26パーセント、12パーセントに減少していますので、門別地区の濁りの影響がはっきり出ました。
    • 図1
    • 図2
    • 図3
(2)成長量調査
  このM2タンパクを遺伝子導入技術により大腸菌に作らせ、これを試験管内で培養したニジマス由来の細胞に触れさせました。すると細胞はアポトーシスを起こしました。細胞はM2タンパクと接触すると自分はアポトーシスを起こすべきと判断してしまうようです。
(3)水深別着生量調査
  IHNウイルスのM2タンパクは魚の細胞にアポトーシスを起こさせる能力があり、ウイルス感染時においては特にリンパ球にアポトーシスを起こさせると考えられます。リンパ球は外敵から身を守るべき細胞であるのにIHNウイルスのM2タンパクに接触するとアポトーシスを起こして死んでしまいます。リンパ球がなくなれば魚は外敵に対してなすすべもありません。アポトーシスは生物にとって本来なくてはならない大切なしくみですが、IHNウイルスはこれを利用し、自分が魚の中で増殖するのに一番の邪魔物であるリンパ球を壊していると考えられます。

  M2タンパクのアポトーシス誘起能こそがIHNの恐ろしいウイルス病たる理由であると考えています。(北海道立水産艀化場病理環境部 畑山誠・鈴木邦夫・坂井勝信)

    • 図4
    • 図5

おわりに

  今回の調査で濁りがコンブに与える影響は大きいことがわかりました。きれいな海を取り戻すためにも、森、川を救い、自然を守っていくことが大切だと思います。

(日高東部・西部地区水産指導所 函館水試室蘭支場増殖科・主任専技)