水産研究本部

試験研究は今 No.374「1998年北海道沿岸域の漁海況について」(1999年2月19日)

1998年北海道沿岸域の漁海況について (各地区水産技術普及指導所からの報告より)

  一昨年より、全道の各指導所から、年末に1年を振り返り、担当地先で見られた漁況、海況についての情報を寄せてもらっています。一昨年は、カタクチイワシの大群が道南沿岸に押し寄せ、一部養殖試験施設に被害があったことを記憶している人もおられるかと思いますが、毎年、毎年、海況が異常、異常と言われている中で観測による前浜の環境モニタリングとは別に前浜で起こっている目に見える現象を記録することで環境の変化を身近に感じることも必要ではないでしょうか。主要な魚種の漁獲状況については、業界紙等でよく取り上げられており、また数値による評価は正式な漁獲統計情報に譲るとして、本文では昨年の北海道沿岸の海況、漁況の概観をつかむため、各前浜発信の情報を海域別に整理してみました。

1.1998年の沿岸の海況

沿岸水温の概要は
  • 春季太平洋側では親潮系水の勢力が強く水温は低めに推移したこと。
  • 概して夏の天候は不順で雨が多く日照時間が少なかったこと。
  • 秋季は全道的に水温が高く、水温が下がるのも遅れた。また、宗谷暖流の勢力も強かったこと。などがあげられます。
次に海域毎の特徴的な漁況について整理してみました。

2.海域毎の漁況

(1)日本海(利尻~福島)
  • スルメイカ、ホッケ、イカナゴ等の日本海を代表する魚種が軒並み不振であった一方で、ヒラメ、檜山沿岸のサクラマスが好漁であった。
  • 沿岸ニシンは留萌、石狩管内合計で2年連続100トンを超えた。
  • ウニ類の生産は餌料海藻の着生が良好なこともあり各地で生産が増加した。
  • 留萌管内が主要産地であるホタテ採苗は付着数が少なく不振であった。
(2)津軽海峡・噴火湾(知内~鵡川)
  • 噴火湾のホタテ採苗が昨年にも増して不振であった。
  • 夏季~秋期にかけての日照不足、大雨等の天候不順によりコンブ及びウニの質の低下と生産量が減少した。
  • 前浜のスルメイカも昨年と比較し大減産であった。
  • 秋期のスケトウダラ漁は好漁であった。
(3)太平洋(門別~根室)
  • 海域で生産されるコンブの内、主要なミツイシコンブ、ナガコンブとも天候不順等の影響により貝殻島を除き大幅に減産した。
  • 十勝・釧路沖のサンマ漁は低調であった。
  • 秋サケは来遊が遅れ気味で漁獲量も昨年を下回った地区が多かった。
  • 日高・十勝沖のスルメイ力は昨年ほどではないが、まずまずの状況であった。
  • 十勝、釧路のシシャモ漁は不漁該当年にもかかわらず好漁であった。
(4)オホーツク海(別海~稚内)
  • 網走西部以北のリシリコンブ、知床半島沿岸のラウスコンブは天候不順等により減産した。
  • 地徹きのホタテガイの生産は順調、稚貝採苗も良好であった。
  • 秋サケの漁獲量はほとんどの地区で前年実績を下回った。 

3.珍種、希種の出現

  各々の地区にとって例年とは違った特異的な魚介類の出現状況を暖流系と寒流系に分けて図に示します。暖流系ではアオイガイ(貝ダコ)が各地に広く出現しました。また採苗不振の直接の原因ではなさそうですが留萌管内ではウキツノガイの大量出現が不気味でした。寒流系では春季、噴火湾に流氷の使者クリオネが出現しました。また松前では絶えて久しいニシンが少量ですが採捕されました。さて、エルニーニョも収束したといわれている今年は、珍しい生き物のどのような出現地図が描かれるのでしょうか。
    • 図
    • ウキヅノガイとアオイガイ

(水産林務部栽培振興課 主任 専技)