水産研究本部

試験研究は今 No.384「釧路水試プラザ連絡会議の話題から」(1999年5月21日)

釧路水試プラザ連絡会議の話題から

  釧路水試では、去る4月19日に十勝支庁管内、4月20日に根室支庁管内、4月27日に釧路支庁管内のプラザ連絡会議を開催しました。このプラザ連絡会議は、各管内の漁業協同組合、市町村、支庁、水産技術普及指導所の参加により各担当者から昨年度のプラザ事業の実施状況を報告したり、水試からは今年度の各研究部事業計画やプラザ事業の実施計画を説明するために毎年、年度初めに開催しています。

  今回は、各支庁の連絡会議で共通して話題となった、ヒトデの大量発生の問題と回遊性魚種の資源動向について紹介させて頂きます。

1.ヒトデの大量発生について

  道東太平洋海域は、特に根室海峡海域では昭和50年代から共同漁業権内のホタテ漁場の造成に伴い大量のヒトデが水揚げされ、その処分に漁業関係者は現在も大変苦慮しています。また、ここ2~3年では、十勝・釧路海域でもヒトデの大量発生が続き、ツブやカニなどの篭漁業等へ大きな打撃を与えています。

  このことから、釧路水試と十勝地区水産技術普及指導所では、広尾漁協や広尾漁協ツブ部会の協力を得て、今年度プラザ関連調査研究事業(この事業は単年度で成果の見込めるものを対象にしています。)で「ヒトデ駆除に係る生態調査」を実施します。これは漁業生産活動の中で、環境(海)に悪影響を与えないように海中に還元する方法がないかを模索するため、ヒトデ類の再生機能等の生態を調査するものです。会議の中では、この調査の進捗状況に関する質問が多く、関係者皆さんの関心の高さを実感しました。調査結果については、またの機会に報告したいと思います。

  ある方からは、もっと根本的なヒトデの生態や発生につて研究した方がよいとのご指摘も受けました。確かに根本的な研究は大切ですが、現在漁業生産の対象になっていないヒトデについて、研究課題に取り入れるのは非常に難しい現実にあります。

  また、このやっかいもののヒトデを有効利用する方法は無いだろうかとの質問もあり、肥料化については昭和10年代に試験をした結果、窒素分や塩分含有量の関係等で、あまり活用はされなかったようです。現在民間企業との共同研究「未利用水産バイオマスからの有価物の回収技術開発試験」で、化粧品の原料となるグリセリルエーテルをヒトデから抽出する試験を実施していますが、現段階ではヒトデ全体量の約0.3パーセントしか回収できないことから、今後の課題が多く残されています。

  行政的取り組みとして、十勝支庁ではヒトデの成分分析や脱塩化に向けた取り組みの計画について報告がありました。

  また、食用としての研究については、過去に青森県八戸にある加工研究所で取り組んだことがあるが、実用化に至ったものはありませんでした。

  釧路支庁管内の白糠漁協では、この4月からツブ漁を休止し、ヒトデの駆除作業を実施しています。漁業者としては、生業を休んでまでヒトデの駆除をしなければならないという現実の中で、釧路市漁協も同様な駆除を行うことから、釧路水試としても、少しでも皆さんの手助けができるよう、調査研究に励む所存です。
    • 根室支庁管内プラザ連絡会議の様子
    • 釧路地区プラザ連絡会議

2.回遊性魚種の資源動向について

  道東太平洋におけるイカ、サンマ、イワシ等の回遊性魚種の資源動向については、地元漁業者の漁業生産はもとより、外来船の入港の多寡にも影響します。

  これら魚種の中長期的な資源動向についての質問がありました。

  誰もが大変気になる話題です。
  • マイワシは長期的には非常に厳しいようです。
  • カタクチイワシは昨年、久方ぶりに3万tの水揚げがありましたが、魚群としてはもっとあったようです。今後、継続してくれれば良いが、加工処理施設の整備が不可欠な問題です。
  • マサバは一時的な漁獲がみられ、中長期的には変動期に入ってると思われますが、すぐに増えるような兆しはありません。
  • スルメイカは一昨年、昨年と水揚げが減少しています。今年の動向によっては、資源の低水準期が再びくる可能性もあります。
  • サンマは昨年漁獲量が半減しました。値段が高くまだ良かったですが、資源的には最悪の状態だったと言えます。浮魚類は一度減少すると資源的に低い状態が長く続く傾向もあり心配です。
今年が今後の資源動向を占う勝負の年と言えるでしょう。
カタクチイワシ以外は、どの魚種もなかなか厳しい状況にあるようです。

(釧路水産試験場企画総務部主査)