水産研究本部

試験研究は今 No.399「混獲・投棄魚問題について(小型魚を保護するために・・・)」(1999年10月1日)

混獲・投棄魚問題について(小型魚を保護するために・・・)

混獲魚とは?

  ここでは、人間にとって商品価値の低い魚種や有用魚種の中でも規定サイズ以下の小型魚を指すことにします。

  混獲・投棄魚として、平然と捨てられている魚種が、ある地域では、膨大な労力及びコストをかけて人工種苗生産から放流が行なわれています。

   一方、地域によっては、漁業者自ら干し魚や加工品として付加価値をつけ、涙ぐましい努力により販売されています。 そこで、水産資源の有効利用の観点から、オホーツク海に面したある漁協において、混獲魚の実態調査及び銘柄別の漁獲統計調査を行い、生物的(資源的)あるいは経済的な側面から検討した結果を紹介します。

混獲魚実態調査結果(カレイ刺網)

  この漁協では、混獲魚をすべて投棄しているわけではなく、ミール工場などに1キログラム当たり約10円で売っています(地元ではジャミと呼ぶ)。混獲魚漁獲量の年別推移(図1)によると、近年ではカレイ刺網が約50トン前後で最も多く、次に底建網、小定置網が約20トン前後となっています。昨年は、まず混獲魚の最も多かったカレイ刺網から調査してみました。混獲魚は6、7月に多く、混獲魚重量組成の月別推移(図2)によると、4月には商品価値の低いヌマガレイ(通称カワガレイ)の比率が高く、5月以降スナガレイ(小型魚)の比率が高くなってきています。そのほかにカジカ類、ソイ類、ホッケも見られました。
    • 図1
 マガレイやクロガシラガレイは小型でも売れる(しかし安い)ため、投棄量は少なく、スナガレイの小型魚(全長約18センチメートル以下)は特に単価が安いため、投棄量はカレイ類の中で圧倒的に多いことがわかりました。
次に投棄率について考えてみましょう。

ここでは、投棄率=投棄量/水揚量(井上:1997)としました。

魚種別の投棄率(表1:小型魚漁獲の経済的デメリットの欄に配置されています)によると、スナガレイについては、投棄率が尾数にして48.4%となっています(尾数換算:約26万尾)。つまり水揚尾数の約半分に匹敵するほどの投棄尾数があったということになります。

小型魚漁獲の経済的デメリット

  さらに、ある漁協のカレイ刺網で水揚されたマガレイ(カレイ類では最も単価が高い)について、銘柄別(大きさ別)に漁獲尾数及び漁獲金額の推移を調査しました。 漁獲尾数の銘柄別比率の推移(図3)によると銘柄の(5)~(6)番(全長19センチメートル未満、表2参照)の尾数比率は約15パーセントですが、漁獲金額の銘柄別比率(図4)によると、わずか約3パーセントにすぎません。

  つまり、銘柄の(5)~(6)番などの小型魚は単価が安くなるため、全漁獲金額に比べると、ほとんどプラスにはなっていないのです。
    • 表1
    • 図3
    • 図4

おわりに

  以上のように小型魚の漁獲は、経済的なデメリットをもたらしているだけではなく、小型魚が漁獲され死亡した数は、再生産にも悪い影響を及ぼしていることも考えられます。
現在、沖底と沿岸との資源管理協定によると、カレイ類については、マガレイとソウハチのみが「体長15センチメートル(全長換算:約18センチメートル)未満は、漁獲重量の20パーセントを越はならない」とされています。これらの魚種ばかりでなく他の魚種にも、規制サイズについては、生物的(成熟サイズ)、経済的(単価等)な観点から新たに決める必要があると考えています。

  さらに、漁業者への規制措置だけではなく、遊魚者へも規制サイズ以下の小型魚を放流する事も徹底していかなければなりません。

  天然資源に対する人間の管理には限界があるのはもちろんですが、カレイ類のような比較的寿命の長い底魚では、適切な資源管理と産卵環境等の保護による資源の回復は決して夢ではないと考えています。

  今回はカレイ刺網が対象となりましたが、今後は小定置網や底建網等にも対象を広げ、地元漁協及び水産技術普及指導所の協力を得ながら、混獲魚の実態調査を継続していく予定です。

(網走水産試験場 資源管理部 村上修)