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北海道林業試験場研究報告-第59号-

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第59号(令和4年3月発行)

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カラマツ類の着花に及ぼす施肥の効果(PDF:1.2MB)
今 博計・成田あゆ・石塚 航・佐藤弘和・来田和人
P1~8
( 1 ) グイマツとカラマツの雑種採種園で2015年から2018年にかけて施肥を行った。窒素の単肥区,窒素・リン酸・カリ( 3 : 6 : 4 )の混合肥料区,比較対照の通常施肥区の 3 処理を設けた。試験にはグイマツ精英樹(中標津 5 号)の107ラメットを用い,2019年まで雌花数を計測した。2017年から2019年の期間,窒素だけを与えた施肥は雌花数を減少させたが,窒素・リン酸・カリを混合した肥料では雌花数を増加させた。 ( 2 ) 小澤・松崎(1955)が施肥と針金のまきじめによる着花促進処理を行った16年生カラマツでの花芽の着生数を再分析した結果,窒素の施用は花芽の着生数を減少させる傾向があり,リン酸とカリの施用と針金のまきじめ処理には花芽の着生数を増加させる傾向が認められた。

2002年度調査記録による網走川上流域における河岸侵食・崩壊発生状況(PDF:1.2MB)
佐藤弘和
P9~15
浮流土砂の発生源となりうる河岸侵食の分布と流路形状,地質,周囲の土地利用の関係を明らかにするため,当時網走支庁が北海道東部オホーツク海沿岸に位置する網走川上流とその支流を対象に,河岸侵食地・河岸崩壊地の分布およびその位置での流路形状(攻撃斜面,滑走斜面,直走斜面),地質,周囲の土地利用(森林,農地,宅地など)を記載した記録を解析した。侵食・崩壊地は,攻撃斜面で多かった。地質が泥岩主体で相対的にもろい網走川左岸側支流域では,安山岩を主体とする右岸側支流域に比べて侵食・崩壊地密度が多かった。河岸侵食・崩壊地の発生には,流路の地形,地質が関与している可能性が示唆された。

カラマツ幼齢人工林における野ネズミ低密度変動時の被害の現状とエゾシカによる幹食害について(PDF:2.0MB)
雲野 明・山岡克年・明石信廣・中川昌彦・和田尚之・牛尾 守
P17~24
近年,野ねずみ発生予察調査におけるエゾヤチネズミ捕獲数は年変動が小さくなり,比較的少ない数で推移しているが,野ネズミによる被害面積は減少していない。このような捕獲数と被害の乖離について検討するため,継続して被害が報告されている厚真町の 3 ~ 8 年生カラマツ人工林において獣害の発生状況を調査し,正確な識別につながる被害形態の違い,被害報告との関係等について検討した。解析対象とした18~19林分において林分の野ネズミ被害率は4.3 %,シカ幹食害率は22.9 %とシカ幹食害が多かった。捕獲数と被害の乖離の原因の 1 つとして,シカ幹食害を野ネズミ被害として誤判定している可能性が次の 3 つの理由から考えられた。その 3 つとは,(1)本調査を行った者が調査初期にシカ幹食害を野ネズミ被害として間違えたこと,(2)聞き取りから,被害報告を提出する者が誤判定している可能性があると考えられたこと,(3)野ネズミ被害が報告されている 3 林分において,野ネズミ被害が確認できずにシカ幹食害のみ確認できたことである。一方で,シカ幹食害率は野ネズミ被害報告指数と関連がなく,捕獲数と被害の乖離の原因には,誤判定以外の要因もあると考えられた。野ネズミ被害率は,被害報告との明らかな関係はなかったが,シカ幹食害を野ネズミ被害として報告していた可能性のある 3 林分を除外して解析したところ,野ネズミ被害率と被害報告指数は明らかな正の関係が認められた。野ネズミ被害率は林齢とともに増加し,被害が累積していることが推測された。被害形態の違いを検討したところ野ネズミ被害は地際に多く,シカ幹食害は地際に少ないことである程度識別が可能であることが示唆された。シカ幹食害率は,狩猟者 1 人 1 日当たりの目撃数(SPUE)との関連が得られず,調査地域内のSPUEの範囲が3.49~4.89と小さいことが原因と考えられた。

採種園の補植設計:北海道松前町大沢トドマツ採種園造成後の枯損と補植用の配植について(PDF:3.6MB)
石塚 航
P25~39
自然交配に頼る採種園では,近交弱勢のリスクを抑え,遺伝的多様性が高くなるような交配親の配置を維持する必要がある。松前町に新規造成したトドマツ採種園において,シカ等の獣害に起因する枯損が生じたことから,採種園の機能を適正に維持するために補植することとなった。ただし,造成時に使用した系統とは異なる系統を植栽することとなったため,新たに適正な配植設計を行う必要が生じた。この配植設計の過程において,既存の採種園設計支援プログラムを用いたので,その手順について報告する。