十勝海岸・襟裳の湖沼

十勝総合振興局と日高振興局にまたがるこのエリアには、十勝海岸湖沼群と呼ばれるいくつもの海跡湖が太平洋に面して並んでいるほか、襟裳岬の近くにはハートの形で有名な豊似湖などがある。十勝海岸湖沼群のいくつかの湖沼は周囲にある泥炭地などから天然の有機物である腐植物質の供給を受けており、湖水は褐色を呈し、有機物の指標であるCOD濃度が比較的高い特徴がある。栄養塩濃度は、豊似湖を除き、概ね富栄養レベルにある。

エリアの湖沼の水質

エリアの地形・気象など

十勝平野の南側には十勝川と歴舟川に挟まれた標高200~300 mの豊頃丘陵があり、その海岸線に、長節湖、湧洞沼、生花苗沼、ホロカヤントウが並んでいる。これらの湖面標高は1 m足らずであり、潮の満ち引きで海水の出入りがある汽水湖となっている。海岸線から内陸に5 km程入ったところにキモントウ沼とキモントウ小沼があり、湖面標高6~7 mの淡水湖となっている。また、十勝川下流の低地帯には、農地の中に小湖沼がいくつも点在しており、その一つに豊頃町の育素多沼がある。これらは十勝川下流湖沼群と呼ばれ、水鳥や水生植物の重要な生息・生育場となっている[1]。一方、日高山脈の最南端、標高250 m付近に堰止湖である豊似湖がある。

十勝地域では、冬型の気圧配置になると晴天が続き(通称「十勝晴れ」ともよばれている)[2]、冬の1日の日照時間は5~6時間程度と長い。一方、十勝の海は6・7月を中心に海霧の発生が多く[2]、1日の日照時間は4時間前後と短い。北海道の中でも夏は涼しく、最も暑い8月の平均気温(平年値)は十勝川河口にある大津で21.6℃、豊似湖に近い広尾で21.6℃である[3]。年降水量(平年値)は、大津で1076.0 mm、広尾で1709.2 mmであり[3]、広尾では北海道の中でも夏に多雨の特徴がある[4]

エリアマップ
エリアの気象

湖沼の紹介

水質データ更新・UAV撮影画像
UAV撮影画像

[1] Nagata Y., Ishiyama N., Nakamura F., Shibata H., Fukuzawa K. & Morimoto J., 2023. Contribution of hydrological connectivity in maintaining aquatic plant communities in remnant floodplain ponds in agricultural landscapes. Wetlands, 43: 38.https://doi.org/10.1007/s13157-023-01684-5

[2] 帯広測候所, 十勝の気候・気象. URL: https://www.data.jma.go.jp/obihiro/kikou/siki.html(2025年3月4日時点)

[3] 気象庁, 過去の気象データ. URL: https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php(2025年3月4日時点)

[4] 井上聡・奥村健治・牧野司・広田知良, 2017. クラスター分析とハイサーグラフによる北海道の気候区分. 生物と気象, 17: 64-68. https://doi.org/10.2480/cib.J-17-036