水産研究本部

試験研究は今 No.305「生鮮ホタテ貝柱の抗菌シートによる品質保持試験について」(1997年5月30日)

生鮮ホタテ貝柱の抗菌シートによる品質保持試験について

はじめに

  平成8年10月、青森県浅虫で水産庁主催の生鮮介類鮮度保持技術開発事業報告会が開催されました。その際、宮城県から『生ウニを抗菌シートで包装すると日持ちが良くなる』ことが報告されました。

  私たちは、その後、この包装方法を生鮮ホタテの鮮度保持にも応用できないか試験をしたので、その結果を紹介します。

試験材料と包装方法

  平成8年11月、紋別産ホタテを使用し、むき身貝柱25個詰め1パックとし、次表の4区分により試験を行いました。

表 試験区分と包装方法

1 紙タオル上下包装(十條キンバリー製)
2 抗菌シート下敷包装(積水樹脂製)
3 シルクファイバー上下包装(小林製袋製)
4 全く包装しない対照区

  ちなみに抗菌シートとは、よく刺身のサク等に敷かれているもので、シルクファイバーは、牛肉等を包むのに用いられている資材です。それぞれ使用方法に従って包装した姿を写真1に示しました。そして、これらを5度で貯蔵し、硬化発生率(硬化数/25個×100)と生菌数の変化を調べました。

抗菌シート効果で硬化も抑制!

  図1に硬化発生率の変化を示しました。

  包装材を全く使用しない対照では4日目、紙タオルと抗菌シートは5日目、シルクファイバーでは6日目に硬化が発生し、7日目で全て硬化しました。また、硬化発生時点で各区とも臭いにより初期腐敗と判定されました。(1)の試験区では貝柱自体の腐敗臭よりも紙タオルに移ったドリップの腐敗臭が強くなっていました。
図2に生菌数の変化を示しました。対照に比べて、抗菌シートとシルクファイバーでは生菌数の増加が遅い傾向がありました。また、対照のドリッブの生菌数は貝柱よりも高いものでした。

  以上の結果から、対照以外は、ドリッブが包装資材に吸収され、抗菌シートとシルクファイバーでは生菌数の増加を抑制できたと推定されました。また、抗菌シートやシルクファイバーでは硬化の発生が対照よりも遅れることから、生鮮ホタテ貝柱の品質保持に有効ではないかと考えられました。
    • 写真1
    • 図1
    • 図2

ところで、ホタテ貝柱の「硬化」とは?

  生鮮のホタテ貝柱を低温で貯蔵すると、貝柱の表面が黒ずみ、指で押した時に硬くなる現象が起こります。流通の現場ではこれを「硬化」と呼び、品質劣化の目安にもなっています。この硬化は、魚では良いと言われる一3度や0度で貯蔵すると、5度で貯蔵した時よりも短時間で発生することが分かっています。

(網走水産試験場 紋別支場 木村 稔)