水産研究本部

試験研究は今 No.317「第1回津軽海峡研究集会が青森市で開催される」(1997年9月5日)

第1回津軽海峡研究集会が青森市で開催される

  7月30日、水産海洋学会の水産海洋地域研究集会として、青森水試と函館水試も共催して、第1回の津軽海峡研究集会が青森市で開かれました。

  この研究集会は、北大水産学部、東北水研八戸支所、青森水試と函館水試の津軽海峡をはさんだ4つの水産研究機関からそれぞれコンビーナーを出して企画してきたもので、今後は2年に1回、青森水試と函館水試が交互に世話役となって開催される予定です。その概要をお知らせします。

1.開催主旨

  日本海と北太平洋海域をつなぐ津軽海峡は、冬季には親潮水に影響されますが、夏・秋季を中心に対馬暖流の影響を強く受ける海域です。そして、海峡を抜けた対馬暖流は津軽暖流と名を変えて、道南から三陸沿岸域を南下します。

  津軽海峡海域は変化に富んだ海底地形と海洋生態系に対応して豊富な魚介藻類を対象とする漁業生産が行われています。この太平洋と日本海をつなぐ回廊は、海洋生物、特に魚類の移動回遊経路として重要な役割を果たしています。例えば、マイワシの太平洋海域での大豊漁のきっかけになった魚群は津軽海峡を通って日本海から太平洋に移動したといわれています。また、北側(北海道)と南側(青森県)では、生物相が相違していたり・海洋生物の出現・移動回遊などにズレが生じたりしています。しかしながら、津軽海峡における海洋環境や生態系については、海峡という特異な環境による調査の困難性もあり、未解明な部分が多く残されています。そこで、津軽海峡をはさむ青森県と北海道の水産関係研究者が手を結んで、当海域における知見を集約し、問題点を具体化させ、科学的調査活動を推進するために研究集会を組織し、開催することにしました。

2.参加機関

  北大水産学部、日水研、青森水試、青森県増殖センター、青森県、中央水試、釧路水試、網走水試、栽培漁業総合センター、渡島中部指導所、渡島西部指導所、渡島南部指導所、日高東部指導所、函館水試。

3.話題提供と発表者

1基調講演
津軽海峡域の資源生態学的特性 -マコガレイの生態を通して- 高橋豊美(北大水産学部)
2発表
  • 津軽暖流の流動変動 西田芳則(函館水試)
  • 津軽海峡の潮汐と数日周期変動磯田豊(北大水産学部)
  • 陸奥湾におけるマダラ稚魚の生残過程 高津哲也(北大水産学部)
  • 陸奥湾におけるマダラ産卵群の生態-96年漁期の来遊時期に見る- 小田切譲二(青森水試)
  • 木古内湾のマダラ成魚の移動回遊 夏目 恭成(網走水試)
  • 津軽海峡青森県沿岸におけるヤリイカの移動と漁獲動向 伊藤欣吾(青森水試)
  • 津軽海峡北海道沿岸域のヤリイカの来遊と産卵性状について 中尾博己(渡島西部指導所)
  • 津軽海峡にお字るミズダコの漁獲動向と移動回遊について 佐藤恭成(青森県水産部)
  • 津軽海峡青森県沿岸の漁業 大川光則(青森水試)
  • 津軽海峡北海道沿岸の漁業 水島純雄(函館水試)

  高橋教授は津軽海峡付近には4群のマコガレイが生息しているが、複雑な海流や海底地形に対応して、生活洋式がそれぞれ異なると発表した。夏目によれば索餌期には道南から道東太平洋のほぼ同じ場所を回遊したマダラが、産卵期にはそれぞれ生まれた海峡の南北にきれいに分かれて戻っている。佐藤は海峡のミズダコは行ったり来たりが激しく、同一の系統群とみなされるとし、当然ではあるが、魚種によって津軽海峡への適応の仕方が異なることに興味が持たれた。

  発表要旨集が出来ていますので、興味のある方は函館水試までご連絡下さい。

(函館水試 資源管理部 小笠原 惇六)

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