水産研究本部

試験研究は今 No.337「韓国漁船の操業による影響を調査」(1998年3月13日)

韓国漁船の操業による影響を調査

はじめに

  すでに新聞報道でもご存じのとおり、本年1月23日に日本が韓国に対し、日韓漁業協定を終了(破棄)通知しました。韓国はその対抗措置として、従来の自主規制ラインを破って道南太平洋沿岸域に入り、最盛期を迎えているスケトウダラを狙って操業を続けています。

  日本では昨年からタック(TAC)により、直接量的規制を行っているなか、新漁業協定締結までの1年間で駆け込み漁獲をあげようとしており、資源状況の悪化も懸念されています。そこで、道水試として、韓国船操業の資源に与える影響度を明らかにするため、太平洋海域の緊急的調査を行うことになりました。

調査計画の概要

  図1に調査海域を示しましたが、2月23日から3月2日にかけ、現在も韓国船の操業の行われているエリモ岬~十勝沖、並びに恵山岬~胆振沖の範囲で行いました。調査には現在の最新鋭の調査機器を装備している稚内水試の北洋丸と釧路水試の北辰丸の2隻が分担しました。ともに既存の調査計画をやりくりし、それぞれ太平洋に回航して行いました。本調査には三宅予測科長、金田研究員(稚内水試)、志田研究員(釧路水試)が乗船しました。
    • 図1
 調査内容としては、まず、当該海域の資源、特にスケトウダラ資源の状況を最新鋭のシムラッドEK500という科学計量魚探によりスケトウダラ資源量を把握します。この魚探では、まずエコーグラム(魚探の反応画像)を得、音波の反射強度であるターゲットストレングス(TS)が魚体長との間に一定の関係があることから、TSの組成から魚体組成を求めます。

そして海面1マイル平方面積当りの反射強度から資源量を推定します。また、科学計量魚探による画像の中味(魚群と魚体サイズ)を確かめるため、今回特別に着底トロール網による魚体のサンプリング調査を行いました。

さらに、韓国漁船による漁場の荒廃状況を見るために、操業痕等海底状況を把握することができるROVという水中テレビを使用して観察を行う計画も組みました。

調査結果の概要

  今回の調査結果は現在とりまとめ中ですが、把握できた一部を紹介しますと、スケトウダラの漁場での分布については、十勝沖での水深150~200メートル線では産卵群(平均尾文体長、45~50センチメートル)、水深200メートル線では未成魚(28~32センチメートル)、水深300メートル以深では噴火湾から回遊してきたと思われる産卵後の成魚(35~40センチメートル)が主群となる分布が認められました。したがって、韓国船は水深200メートル以深の未成魚、成魚を漁獲していると考えられ、道東海域のスケトウダラ魚群ばかりでなく、来年に噴火湾で産卵する群にも影響を与える可能性が高いと思われます。なお、量的な評価については現在、計量魚探のデータを解析中であり、水中ビデオの映像も含めて、近々公表できると思います。

おわりに

  ところで、今回期待されている最新鋭のEK500という計量魚探は、現在4船ある道水試の試験調査船の中でも北洋丸にしか装備させていません。今後早期に他の試験調査船にも装備され、今回のような緊急な調査にも即応できるようにしなけれぱなりません。

  最後に韓国船の操業が今後さらに長期化し、春以降日本海北部の武蔵堆周辺海域にも来た場合、スケトウダラ等資源への影響が懸念されます。1日も早く、タック法に対応した新漁業協定の締結による解決を望むところです。

(稚内水試資源管理部)
(釧路水試資源管理部)
(中央水試資源管理部)