水産研究本部

試験研究は今 No.341「利尻島における磯根漁業の変貌」(1998年4月17日)

利尻島における磯根漁業の変貌

  ウニ・アワビ・コンブといった磯根漁業は、利尻島の全漁業生産額の約5割を占めていますが、最近これらに大きな変化がみられます。そこで利尻町と利尻富士町の資料から磯根資源を代表するウニ類とコンブの生産量について、約30年間の変化をグラフにしてみました。

  図1はウニ類の生産量です。昭和40年~60年代にはエゾバフンウニ(カゼ)もキタムラサキウニ(ノナ)も増加傾向にあり、昭和63年には両者の合計で202トンの漁獲があり、最大に達しています。しかし、平成になるとエゾバフンウニが減ってきて、平成7年からはキタムラサキウニの漁獲の方が多くなっています。金額でみると平成元年にはウニ類で約24億円の生産がありましたが、平成8年には約10億円にまで落ち込んでいます。
図1
 エゾバフンウニの減少傾向は隣の礼文島でも同様です水試では礼文の幌泊で稚ウニの発生を調査してきていますが、昭和59年には殻径10ミリメートル未満のものが1平米あたり37個体見られていたのに、平成6年には1個体にまで減少しています。どうしてこうなったかは、現在のところよくわかりません。一方、キタムラサキウ二は一般的にエゾバフンウニより深所に多く棲息していますが、最近は深浅移植が盛んに行われ、これが漁獲増になっている一つの要因かもしれません。また、磯焼けの拡大にともなって、浅所で多くの稚ウニの発生がみられる所もあります。
  図2はコンブの生産量です。天然コンブは非常に大きい年変動を繰り返しながらも、30年間でみると全体に減少傾向にあります。一方、養殖コンブは、技術の発展とともに生産量を増し、平成に入ってからは天然コンブの生産量を上回っています。コンブの生産金額は天然・養殖ともに生産の良かった昭和61年に、両者の合計で17.6億円と最大に達しています。
図2
 養殖コンブは現在もやや増加の傾向にありますが、天然コンブの減少によって、多くの漁業者は大きな影響を受けています。

天然コンブの減少傾向は礼文島でも同様ですが、減少原因は明確でありません。しかし、両島とも磯焼け漁場が拡大しつつあることと関係がありそうです。道水試では、北海道南西部沿岸での磯焼けの発生原因は、対馬暖流が勢力を増したことと冬の季節風が弱くなったことによって冬から春の水温が高くなったことと考えています。そして、磯焼けが持続する原因は高い密度で生息しているウニ類の海藻に対する食害と考えています。発生原因を阻止することは現在のところ不可能ですが、持続原因は阻止が可能です。利尻の平成8・9年のコンブ生産量はやや回復したものの、島内の各所で磯焼けが拡大傾向にあるので注意が必要です。この磯焼けは、持続原因となっているキタムラサキウニを除去・管理することによってある程度解消できますので、今後行政・漁協・漁業者が一丸となってその対策に取り組んで行かなければならないと考えています。

(稚内水試 資源増殖部 名畑進一)