水産研究本部

試験研究は今 No.266「平成7年度中央水試研究発表会開催される」(1996年6月7日)

平成7年度中央水試研究発表会開催される

  平成8年4月12日(金曜日)、中央水試で、7年度の研究発表会が開催されました。

  この発表会は、中央水試の各研究部・室で行われてきた主要課題について、その成果を発表し、今後の問題点の明確化と、次年度の研究計画に活かすため、毎年このころに行われています。

  はじめに村上場長から「この数日の間に、北海道新聞の社説で、資源管理マニュアル、ヒラメやニシンの資源増大プロジェクト関係など、水産関係の話題が2回も掲載されるなど、大変喜ばしいことと思う」旨の挨拶がありました。

  次いで、各研究部の主任研究員が3課題ずつ座長を受け持ちながら、12の課題が発表されました。

  今回は、このうち、資源関係の発表について、簡単に紹介したいと思います。

1.日本周辺クロマグロ調査委託事業 (資源管理部 中田淳予測科長)

  平成6年8月下旬、道南の松前小島付近で、読売新聞の記者により、クロマグロの産卵と思われるシーンが初めて撮影され、漁業者からは9月上旬、同海域で漁獲されたクロマグロの卵巣標本が提供され、産卵の可能性が示唆されました。これは従来想定されていた産卵期より2ヵ月も遅く、また、推定産卵場よりかなり北側水域であることが特徴的でした。

  さらに、同年8月、試験調査船おやしお丸による表層流し網を用いたマイワシ調査でクロマグロ幼魚を採集し、この時期、積丹半島沿岸でもクロマグロ幼魚が多勢漁獲され、その数はおよそ2万尾にも達し、翌7年には1歳魚として北海道沿岸で多獲されており、卓越発生年級群であったことが確認されました。

  平成6年の幼魚の耳石日用輪解析(遠洋水研)により、推定発生時期は松前沖での産卵現象の目撃時期とほぼ一致していることが分かり、これまで日本海におけるクロマグロの遅い時期の産卵は、資源に添加されない無効なものと考えられて来ましたが、これらの結果から資源的に意味のある可能性が示唆されました。

2.資源管理型漁業推進対策事業(ハタハタ) (渡辺安廣 管理科長)

はじめに
  この事業は、資源の減少が著しい日本海ハタハタ資源を回復させるため、妥当な管理方策を策定することを研究の目標として、平成6年度から10年までの5カ年事業で実施しています。
調査方法
次の事項について、調査しました。
  1. 漁獲統計調査:漁業別・地区別漁獲量
  2. 資源生物調査:水揚げ後の生物測定
  3. 標本船調査:操業日誌の解析(予定)
  4. 試験船調査:おやしお丸の漁獲調査
  5. 標識放流調査:移動経路の解明結果および考察
  1. 日本海のハタハタ漁獲量は1962年の4,000トンを最高にその後減少し、1994年は41トン、1995年には21トンと過去最低を記録。
  2. 1995年の漁獲物は大型で、特に雌では3歳魚主体、次いで4歳魚が多かった。
  3. 雄冬~苫前沖の水深100~330メートルの海域で、4月には水深150~160メートルで漁獲され、夏~秋にはこれより深みの200メートル以深で漁獲があった。
  4. 9月と11月に漁獲されたハタハタに標識を装着し72尾を放流した。このうち11月の放流魚1尾が厚田村古潭の産卵場で再捕された。
今後の問題点
  • 自然死亡係数について、再度、検討する必要がある。
  • 沖合域分布について広範な調査が必要。
8年度計画
a)沿岸域稚魚調査:厚田沿岸域の水深5~20メートルで、5,6月に稚魚の分布を把握する調査を実施する計画
b)資源診断:管理型モデル(KASFモデル)を適用し、資源・漁業の現状解析と資源管理による効果予測を行う計画

*文章は発表要旨集から抜粋し再編集しました。(中央水試企画情報室情報課)