水産研究本部

試験研究は今 No.272「歯舞地域コンブ漁場の類型化に関する共同試験について」(1996年7月19日)

歯舞地域コンブ漁場の類型化に関する共同研究について

  釧路・根室管内では、近年荒廃したコンブ漁場の生産性を高めるために、雑海藻駆除事業をはじめとする漁場管理対策が色々譲じられております。このような地元漁協等の努力の結果、漁場のコンブの生産性が着実に回復しています。また、本地域では平成4~6年度の3年間にわたり、釧路水域と歯舞漁協の共同研究として、「雑海藻駆除によるコンブ漁場の活性化試験」を実施して、雑海藻の駆除適期などの効果的な雑海藻駆除技術に関する知見を集積することができました。そして、それら成果を基に雑海藻駆除技術に関するカラーパンフレットをはじめとする普及資料等を作成して、地元関係機関への共同研究成果の普及に務めています。

  今回紹介する新たな共同研究は、歯舞漁業協同組合と共同し、根室地区水産指導所と根室市役所の協力のもと、平成8~10年度の3年間、根室市歯舞地域のコンブ漁場で実施します。本研究では、ナガコンブを中心とするコンブ資源の一層の増大を図るため、歯舞地域のコンブ漁場におけるコンブや雑海藻の植生ほかの諸特性を地区別に明らかにするとともに、それら資料を基に漁場の類型化を行います。
本研究で目指しているのは、それぞれの漁場の特性に応じて、効果的なコンブの増殖対策および漁場管理対策が実施できるようにすることです。調査地点は歯舞地域のコンブ漁場の中から計6地区を選定し(図1)、写真にあるようなコンブあるいは雑海藻の繁茂する漁場において、表1に示した調査研究計画で調査を実施して行きます。
    • 図1
表1 調査研究計画
平成8年度 (1)歯舞地域コンブ漁場のコンブ類と雑海草類の水深別分布調査の実施
(2)歯舞地域コンブ漁場のナガコンブ主生育帯におけるコンブ類と雑海藻類の植生パターン解明調査の実施
平成9年度 (1)歯舞地域コンブ漁場のコンブ類と雑海草類の水深別分布調査の実施
(2)歯舞地域コンブ漁場のナガコンブ主生育帯におけるコンブ類と雑海藻類の植生パターン解明調査の実施
平成10年度 (1)平成8~9年度結果に基づく各種補完調査の実施
(2)歯舞地域コンブ漁場の各種類型化資料の作成と配布
(3)歯舞地域コンブ漁場の地区別管理資料の作成と配布

  今回の共同研究の結果、解明・整理・蓄積される歯舞地域のコンブ漁場に関する各種知見は、内容の難解な報告書の作成だけで終るのではなく、最終的には地元関係機関担当者およびコンブ漁業者の方々に内容が分かりやすく、利用しやすい形とするよう十分配慮したいと考えています。そのため、カラー印刷やフォトCDなどのマルチメディア素材を用いた資料を作成し提供して、その効果的な普及に務める予定です。その結果、今後歯舞地域では正確な漁場資料に基づき、確実な効果の期待できるコンブの各種増産対策などが実施可能となり、コンブの生産性の安定と向上に寄与できると考えています。また、本研究成果は釧路・根室管内の他の地域におけるコンブ漁場の各種知見の収集と活用のモデル資料としての利用も期待できるでしょう。
(釧路水試 資源増殖部 阿部 英治)
    • 写真1
    • 写真2