水産研究本部

試験研究は今 No.281「噴火湾胆振海区ウニ漁場実態調査について」(1996年10月18日)

噴火湾胆振海区ウニ漁場実態調査について

  北海道ウニ栽培漁業協議会の地方ブロック協議会として、平成7年に室蘭ブロック協議会胆振支部が発足しました。この協議会活動の一環として、平成7年度に室蘭から豊浦までの噴火湾胆振海区のウニ人工種苗放流漁場実態調査を実施しました。胆振支部の活動は、胆振支庁管内の噴火湾海域に面する市町、漁協で組織する噴火湾胆振海区漁業振興推進協議会ウニ栽培部会の事業活動と連携して行ったものです。

  噴火湾胆振海区の各漁協では、過去数カ年にわたりエゾバフンウニの人工種苗放流を行ってきていますが、資源増大としての効果については不明確なことが多いのが現状でした。この海区のウニ栽培漁業の定着を推進するためには、各漁協地先のウニ人工種苗放流漁場の現状を把握することが不可欠であると考え、実態調査を行いました。また、平成8年度から3カ年計画で実施するウニ人工種苗放流漁場モデル地区選定の基礎資料とする目的もかねて行いました。今回は平成7年度に実施した実態調査の結果などの概要について紹介します。

水産動物類、海藻類の状況

  各漁協の代表的なウニ人工種苗放流漁場を選び、スキューバ潜水によるライン取り、または枠取り方法によって、水産動物類と海藻類の標本を採集するとともに、水深、底質調査を行いました。漁協地先別の水産動物類の1平方メートル当りの出現状況を図1に示しました。出現した水産動物類は、エゾバフンウニ、キタムラサキウニ、ナマコ、イトマキヒトデ、ヒトデ、エゾヒトデ、ユルビトデ、ヨツハモガニ、ヒメエゾボラなどでした。

  室蘭漁協調査区では、エゾバフンウニが1.32個体/平方メートル、37.9パーセントと最も多く、次いでヒトデ類0.81個体/平方メートル、23.3パーセントでした。
  伊達漁協調査区では、ウニ人工造成礁内であることから、エゾバフンウニが4.53個体/平方メートル、87.1パーセントと最優占種でした。
  有珠漁協調査区では、ヒトデ類が1.30個体/平方メートル、35.1パーセントと最も多く、次いでキタムラサキウニの1.20個体/平方メートル、32.4パーセントでした。
  虻田漁協調査区では、放流漁場でないことから、ヒトデ類が1.93個体/平方メートル、60.3パーセントと最も多く、次いでエゾバフンウニの0.50個/平方メートル,15.6パーセントでした。
  豊浦漁協調査区では、キタムラサキウニが1.60個体/平方メートル、36.4パーセントと最も多く、次いでヒトデ類の1.00個体/平方メートル、22.7パーセントでした。

  これらの結果から、この海域の放流漁場には、ウニ類の捕食生物といわれているヒトデ類の密度が高いことが分かりました。

  海藻類等については、コンブ類、ワカメ、スジメ等の大型褐藻類とアナアオサ等の緑藻類、ツルツル、ギンナンソウ、ヒバ類等の紅藻類、スガモの種子植物などが出現していました。調査が、7月と10月で時期的に異るため一概には比較できませんが、1平方メートル当りの総湿重量は、室蘭3.0キログラム(7月)、伊達3.0キログラム(10月)、有珠2.2キログラム(10月)、虻田2.0キログラム(7月)、豊浦1.9キログラム(10月)でした。

  平成8年度からこの調査結果を基に、エゾバフンウ二人工種苗放流漁場モデル地区調査が室蘭市電信浜地先に設けられた4,200平方メートルの調査区と400平方メートルの対象区で3カ年の計画で行われています。この調査区内に62,000個体と対象区に10,000個体のエゾバフンウ二人工種苗(平均殻径17.7ミリメートル)を7月に集中放流しました。3カ年後の漁獲まで追跡調査を行い、放流効果について把握する計画です。放流1日後、10日後、1ヵ月後の調査は終わり、3ヵ月後の調査が始まろうとしています。 (函館水試室蘭支場 主任水産業専門技術員 山元 直樹)
    • 図1