水産研究本部

試験研究は今 No.285「シシャモ漁期前調査体験記」(1996年11月22日)

シシャモ漁期前調査体験記

  「まだ夜が明けきらぬ午前4時30分、シシャモの漁期前調査の出港準備のため集合場所に到着。
水試研究部の仕事の勉強めため、と森管理科長に誘われるまま乗船することを約束したのが運の尽き、慣れない船上作業のうえに、こんな早起きをする羽目になってしまった…。」

  今日は釧路水試資源管理部管理科が中心となって行なっている、シシャモの漁期前調査に同行したので、その様子などについて紹介したいと思います。

  シシャモは、北海道の太平洋沿岸にしか分布していない日本固有の魚です。産地としては一般に「鵡川」というイメージが強いのですが、十勝・釧路声管内あわせて200経営体におよぶシシャモ桁網漁業は、道東地区における重要な沿岸漁
船漁業のひとつとなっています。漁獲量をみても、過去最低(十勝90トン、釧路130トン)を記録した1988年(昭和63年)以降は、7年連続して1,000~1,600トンと好漁を保っており、資源保護のため1991年(平成3年)から1994年(平成6年)まで自主休漁となった胆振・日高地方を圧倒しています。

  釧路水試におけるシシャモの調査の歴史は比較的古く、昭和26年にさかのぼります。その後、調査方法の改善をはかりながら、現在では大きく分けて、
(1)漁期前調査(漁況予測)
(2)漁期中調査(親魚遡上期推定)
(3)ふ出仔魚降海調査
の3つの調査が行なわれています。今回私が同行したのは(1)の漁期前調査で、9月上旬から10月上旬にかけて、十勝・釧路の調査海域(水深60メートル以浅)全体を網羅するように、小型桁曳網を用いて漁獲試験を行ない、シシャその分布密度、魚体サイズ、年齢組成などを調査することにより資源の動向を把握して、漁況予測を行なうものです。ちなみに平成7年度の十勝・釧路両海域の漁獲量は予測1,600トンに対し、1,660トンとかなり精度の高い予測ができました。

  釧路港を出て1時間余り、調査地点である、釧路町昆布森地先沖合に到着。水深、水温などを測定したあと、桁網を投網し10分程の曳網の後引き揚げます。さて、ここからが大変。シシャモの桁網といってもシシャモだけが漁獲されるわけがなく(というより私が乗船した時は、そのほとんどが別のさかなたちだった)全身うろこだらけになって魚を選別するのです。似たような魚の名前を研究職員に尋ねながらの作業が続きます。船上にある魚を全部海中に捨ててしまいたい衝動にかられながら、合計4ケ所の調査が終了したのが午前11時過ぎ、「やっと陸にもどれる!」と思ったら、午後からは漁獲されたサンブルの測定作業が待っていたのでした。
測定作業には、釧路ししゃも桁網漁業協議会の調査部会の方たちが加わり、慣れた手つきでシシャモの体長、体重や生殖巣の重量、さらには耳石の採集などの作業をこなしていました。私の方はというと、「作業の邪魔になる。」とか「デスクワークが残っている。」などと屁理屈をこねて、その場から逃げ出してしまいましたが、その様な多くの方々の努力が報われて、貴重なシシャモの資源が将来にわたって、安定的に利用されることを願わずにはいられません。貴重な体験をさせてもらった一日でした。 (釧路 水試 企画情報主査)
    • シシャモ

-第10回公設水産加工研究施設連絡会議開催される-

第10回公設水産加工研究施設連絡会議
  去る10月17日(木曜日)、根室グランドホテルにおいて、第10回公設水産加工研究施設連絡会議が開催されました。この会議は、道内の沿海市町村において水産加工業の振興を目的として設立された公設機関、及び北海道の水産加工関係の試験研究機関並びに行政機関の関係者が一同に集まって、水産加工業の振興に必要な情報提供や意見交換を行なう場として、毎年1回開催されているものです。当日は公設水産加工研究施設(8機関)のほか、道立水産加工試験研究機関(水産試験場、食品加工研究センター)並びに道水産部、商工労働観光部の関係者約40名が集まり、それで事業内容や水産加工関係行政施策などについて説明したあと、質疑応答が行なわれました。

  また、午後からは市内で水産加工業を営んでいる、根室市嘱託員の方々6名が加わり、話題提供として釧路水試辻原料化学科長が「サンマの栄養について」、阪本保蔵科長が「醤油漬イクラの保蔵について」の講演を行なった後、活発な意見交換が行なわれました。

  なお、次年度の連絡会議は中央水試で行なわれることになっています。