水産研究本部

試験研究は今 No.286「網走管内におけるエゾバフンウニ発生状況」(1996年11月29日)

網走管内におけるエゾバフンウ二発生状況

  ウニの資源管理をする上で、新たに加入してくる稚ウニの発生量を把握することはどの海域でも重要なことです。とりわけ北海道で唯一人工種苗に依存していない網走管内では特別に重要な意味をもっているのですが、稚ウニの発生を把握する調査は平成4年(汐留は平成5年から)に始まったぱかりです。それ以前は継続した調査が行われていなかったために、小さいウニが多いけれど、毎年発生しているのか、成長が悪いから小さいままなのか、結論は出ていませんでした。

  調査海域として斜里町ウトロ、網走市二つ岩、興部町汐留およびサロマ湖内第1湖口近傍の4地区を選定し、それぞれ水深別に3~4つの定点が設けられています。

  採取にあたっては、密度が低いサロマ湖のみ試験用小型桁網を用いている他は、潜水によって行われています。今年度各地区2回ずつの予定で計画しました。まだ終了していない地区もあり解析の途中ですが、今までの調査概要を紹介します。なお、それぞれの地区で定点毎に発生量や成長がかなり異なっていましたが、紙面の都合上、定点間の平均値を各地区の特徴として示します。

  この調査は網走管内の3つの水産技術普及指導所、斜里町および輿部町、ウトロ、斜里第一、網走、湧別の5つの漁業協同組合の協力を得て行われており、北海道ウニ栽培漁業協議会網走ブロックの試験事業としても位置づけられています。

  殻径10ミリメートル未満のエゾバフンウニの密度の推移を図1に示しました。ウトロでは平成5,6,7年にこのサイズのウニがみられたのに対し、網走とサロマ湖では平成4年に多くみられました。昨年まで他の海域同様に10ミリメートル未満のものを0齢群とみなしていたため、ウトロ以外の3地区では平成3年生まれの大量発生群がみられ、ウトロだけ平成3年群の発生規模は小さく、5,6年の夏から秋に5ミリメートル未満のウニが確認されたことから、5,6年の当年春生まれと考えていました。

  なぜウトロだけが特殊なのかと疑問をもちながら調査を続けていたわけですが、昨年度初心に帰って年齢査定を行ってみました。

  その結果、各地区とも4本の黒色帯を持つものが多いということが共通してみられました。この群は平成3年秋に発生した群1に相当します(図2)。

  また、ウトロの最も深い定点では特に成長が悪く、満4年でも平均殻径が10ミリメートルを少し超える位にしかならない(図3)でウトロ全体の平均値を引き下げる原因になっていることがわかり、図1のウトロで平成5年にみられたものは平成3年群、6年にみられたものは5年群と考えられました。

  これらのように、平成3年群がやはり管内に広く発生し、平成5年群もウトロ、網走では比較的多く発生したことが分かりました。その後の発生規模は小さく(今年度調査から平成7年生まれの発生量は近年で最も少ないといえます。
    • 図1
    • 図2
    • 図3
  網走管内と他の海域を比較するとか平成3年群が広く発生したこと、発生の規模は年により大きな違いがあること、年齢査定では黒色帯を年齢形質として使えること等の共通点があります。一方深みにも稚ウニが大量に発生すること、成長が極端に悪い場所もあり10ミリメートル未満のものを前年の発生群として扱えない場合もあることなど、網走管内特有の事象も明らかになってきました。
網走管内ではエゾバフンウ二の資源量はいまのところ高い水準にありますが、年齢組成に偏りがあるため、今後の推移に注意していく必要があります。

  また、何がどのように働いてウニの発生の規模を決めているのかという疑問に対して外部の環境要因(海洋条件)との関わりで考えようとするときも、稚ウ二の発生量に関する具体的なデータをもっていなければなにも始まりません。その意味でも稚ウニの発生量を監視する調査を継続していく必要があると思います。(網走水試 資源増殖部 高橋 和寛)