水産研究本部

試験研究は今 No.299「地域ニーズと試験研究プラザについて」(1997年3月28日)

地域ニーズと試験研究プラザについて

  年が明けたと思っていたら、3月も残りわずかとなりました。毎年、1月から3月にかけては1年間の仕事の取りまとめや新年度の準備などで忙しい時期です。

  この時期、水試や指導所では新年度に実施する調査研究等の計画づくりが行われますが、先日、各水試、艀化場の担当者が集まって、9年度のブラザ関連調査研究事業の実施課題選定の協議が行われました。

  各水試、ふ化場から9年度に実施したいという課題が集まりましたが、予算額をオーバーする内容であったため、絞り込みが行われました。決定までの内幕話も交え、一部を再現してみましょう。

白熱する検討会議

A:予算オーバーで全部の課題をそのまま実施することは出来ないので、どこを削るか協議しよう。
B:まず、各事業の内容を精査して、必要な経費のみに絞り込むことが先。
C:△水試の○○の課題は地元で行うべき内容でないのか。ブラザの課題には馴染まないのではないか?
また、各課題の経費内訳には潜水料や用船料がほとんどのものがあるが、地元の協力は得られないのか。
D:○○の課題は、地元の二ーズを受けて、支庁とも協議をしてきた。地域としては必要な課題と考えてきた。
C:地元の二ーズといっても全てプラザ事業で出来るとは限らない。水試や指導所が全部やる話になるのか?
E:プラザの調査研究の趣旨は、地域の二ーズに基づき短期間に成果が出る課題を選定するもので、この観点で各課題の優先順位をつけるべき。
C:昨年、ブラザ事業を見直したが、地元と一緒になって調査に取り組み、成果を普及できる体制を作ることを狙いとして行ったもの。
数多くの課題をこなすために不十分な調査しか組めず、成果が出なければ何にもならない。
D:地域の二ーズに優先順位はつけられない。地域で必要だからブラザでとり上げるのだと思う。
B:予算が十分にあれば問題は出ないが、決められた予算のなかでやるためには、削れるものは削っていかないと全体がまとまらない。
E:地元がブラザの調査事業に協力する受皿が出来ているかどうかが重要。
A:各事業ごとにどれくらい節約できるか検討してもらいたい。調査回数を減らすとか、地元にお願いできる経費があるか、など。
C:中には行政で行う他の事業で取り組めるものがあるのでは、水産部の中でも調整が必要だと思う。
(話し合いは、まだまだ続きますが…問題点が幾つか出てきました。)
  • 地域の二ーズに優先順位をつけれるかどうか。
  • 地域の二一ズをどこまでプラザ関連調査事業でやるのか。
  • 経費負担はどこまでブラザ事業で持つのか。等々。
難しい問題ですが、地域の二ーズをどう考えるかがポイントの様な気がします。

地域二ーズって何だろう?

  ところで、地域二ーズが一般的な言葉になったのは、ここ10年位の間です。

  当時は、二ーズという言葉が新鮮で、「業界二ーズ」、「消費者二ーズ」、「研究二ーズ」、「行政二ーズ」等が生れましたが、特に「地域(漁村)二ーズ」は「地域が必要とすること」であり、行政や研究機関としては、「地域(漁村)のために頑張ろう」というような意識が強かったような気がします。

  水試も「変わらなきゃ」とか、「頑張ろう」という気持ちで各種の調査に取り組んできました。

  昔も今もこの「頑張ろう」という意識は変わっていないと思いますが、最近の「地域二ーズ」に対する思いは少し違ってきたのではないでしょうか。

最近の世間の動きについて

  海洋法条約により周辺海域の資源に対しては、TAC制度が導入され、今まで以上の所有権が発生したと同時に管理する義務も生じました。

  漁協自体についても水協法が改正され、商法適用の範囲が拡大しています。

  つまり、現在は、漁業者は自分が漁獲する資源を維持するためには自ら資源を守る義務があり、漁協も1企業として経済社会の中で生きていかなければならない時代の流れにあると思います。

地域二ーズはギブアンドテイクか

  地域の二ーズもこの流れの中で考える必要があるのではないでしょうか。

  昨年、見直しを行ったプラザ事業においても、調査事業の成果を普及できる体制を作るために「漁業者を含めたブラザ実践チーム」が新たに組織されましたが、これも成果を漁業者のものにするためには、漁業者自らが主体的に取り組む必要が生れているからだと思います。地域の二ーズの考え方は色々あると思いますし、一言で論じることは出来ませんが、二ーズも広い意味でギブアンドテイクの関係にあるのだと思います。

  当り前のことですが、言うべきことは言い、聞くべきものは聞く、自分たちで出来ることは主体性と責任をもってやる。このことがやはり重要だと思います。

  次号では水試、艀化場の9年度の新規研究事業についてブラザ関連調査も含めて紹介します。(漁政課研究企画係長)