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北海道林業試験場研究報告-第60号-

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第60号(令和5年3月発行)

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第60号全編(PDF:7.4MB)

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1990年造成のアカエゾマツ次代検定林における優良個体の選抜(PDF:3.4MB)
米澤美咲・石塚 航・今 博計・佐藤弘和・花岡 創・福田陽子・辻山善洋・玉城 聡
P1~11
1990年に北海道立総合研究機構林業試験場の実験林内に造成されたアカエゾマツ次代検定林を対象とし,優れた遺伝的特性を有する個体の選抜を行った。30年生時に,成長関連形質として幹材積を,材質関連形質として応力波伝播速度,およびピロディン貫入量を測定し,それらの育種価を計算した。また,通直性を根元曲がりと幹曲がりによって評価した。選抜はi)幹材積の育種価を基準とした成長性に優れる,ii)材質に関連する2形質の育種価と通直性評価のいずれにおいても劣らない,iii)遺伝的多様性が担保される,ことを基準に,総合評価に基づいて行った。iおよびiiで設けた選抜基準をすべて満たすのは51個体(全検定木の7.4%)で,このうち遺伝的多様性を考慮して17個体(同2.5%)を第2世代精英樹の候補木として選抜した。本検定林における第2世代精英樹候補木については幹材積で21.45%,応力波伝播速度で2.00%,ピロディン貫入量で2.01%の改良効果が期待でき,今後の林木育種を推進するための育種集団の構成個体として活用される。

モーラップ部分林のアカエゾマツ人工林におけるフェロモントラップによるヤツバキクイムシの捕獲調査(PDF:2.3MB)
内田葉子・小野寺賢介・德田佐和子・和田尚之・山田浩二・塚野雅彦・山岸 靖
P13~19
苫小牧市と千歳市に位置する53~56年生のアカエゾマツ人工林で,2017年から生立木に対するヤツバキクイムシ被害が発生した。ヤツバキクイムシの発生数の変化を調査するため,2020年と2021年の春から秋にかけて,フェロモントラップによるモニタリング調査を実施した。2020年は6月上旬にヤツバキクイムシが最も多く捕獲され,その後は減少したものの,7月中旬から8月下旬にかけて再び捕獲数が増加する2山型の消長を示した。2021年は6月上旬の捕獲数が全体の約61%を占め,その後捕獲数は減少した。また,2021年に捕獲されたヤツバキクイムシの乾燥重量から,個体数を計測する推定式を作成した。2020年の被害後,561本のアカエゾマツを伐倒・搬出したが,2021年に新たに37本の被害木が発生した。2021年時点でヤツバキクイムシ被害が発生してから5年目を迎えており,新たな被害木の発生本数は少なくなってきている。しかし,ヤツバキクイムシの捕獲数が増加したこともあり,今後も被害は継続する可能性がある。

改良型雑種採種園方式を用いたカラマツ類雑種採種園の配植設計(PDF:3.5MB)
石塚 航・今 博計
P21~28
将来にわたるグイマツ雑種F1種苗の安定供給のため,かつ,さらに優れた遺伝的特性を有する種苗の供給のため,カラマツ類雑種採種園の拡充が求められている。道有訓子府採種園のブロック2箇所にて雑種採種園を新規造成することとなったので,種子の雑種率の向上を主目的とした改良型雑種採種園方式で配植を設計した。すなわち,グイマツは単一母樹クローン列状植栽で設計し,グイマツ1列に対してニホンカラマツ2列の割合で混植させた。植栽するグイマツやニホンカラマツの系統は,これまでの林木育種事業での利用実績を踏まえて優良な系統構成となるようにし,遺伝的多様性にも配慮して配植した。