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北海道林業試験場報告-第13号-

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第13号(昭和50年10月発行)

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根室,釧路地方における防災林造成法の研究(PDF:1.06MB)
伊藤重右ヱ門・新村義昭
P1~15
この報文は,北海道における防災林造成法に関する第4報であり,1~3報(斎藤・伊藤 1971,斎藤・伊藤・原口1972,伊藤・今・新村・斎藤 1974)の日本海岸地帯に統くものである。根室,釧路地方は防災林造成技術のための地帯区分上では,太平洋岸東部に位置する。現地調査は,根室,釧路地方の民有林,道有林および国有林の中からえらばれた林分を対象として,1974年に行われた。なお,この研究の一部は第14回治山研究発表会(鵜飼・伊藤・新村),昭和49年度北海道林業技術研究発表会(伊藤・新村 1975a,1975b)で発表された。
この研究のまとめに当り,北海道治山課をはじめ現地調査を支援された根室支庁林務課の小野寺宗昭治山係長,鎌田 胖森林管理係長,鵜飼義和技師,山崎和満根室北部地区林業指導事務所長,釧路支庁林務課の村上啓司森林管理係長,西村晴夫技師,厚岸林務署の松岡清浩造林署課長および根室営林署の関係各位に深く謝意を表する。

密閉法を応用した植物成長ホルモン処理によるさし木効果(PDF:4.80MB)
開本孝昭・斎藤 晶
P17~26
さし木は園芸植物の繁殖法として本州府県では早くから行われてきたが,北海道ではごく一部の樹種についてのみ行われているにすぎない。 さし木は同一遺伝子を具えた個体を用い,手軽にできるという点で,要望が多くなってきた。しかし,樹種,時期,環境条件等により制約を受け,事業的にさし木を行うことの難しいものが,まだ非常に多い。これ等の問題点を解決する方法として,一部ではミスト装置を利用したさし木法がとり入れられ,適用樹種の拡大と活着向上が計られてきたが,施設と経費がかさむ点で一敗的ではない。また,道内では露地ざしを行った場合,地温と湿度を高く保つことが難しく,対象樹種が限定されてしまう。
そこで筆者ら(小杉ら1974)は予備試験として省力的で簡易な方法であるビニールフィルムを使用し密閉ざしに応用したところ,効果がえられたので,1974年は過去の実例から比較的さし木の難しいとされている樹種を選び,さらに植物生長ホルモン処理を行った。一部,処理の手違いにより逆効果のものもみられたが,若干の成績が得られたのでここに報告する。

北海道におけるクリタマバチの分布と被害の経過(PDF:750KB)
上条一昭・館 和夫
P27~35
北海道でクリタマバチがはじめて発見されたのは1964年である。その後1966年までに,全部で4ヵ所の地域に発生していることがわかった。北海道では,寒さにつよい中国グリと日本グリの両方が植えられているが,本州におけるクリタマバチ抵抗性品種は結実しがたいため,栽培はされていない。それでもし大発生した場合は,クリの収穫にとって致命的なものになる恐れがあったので,被害が発見されたときから北海道林務部造林課を中心として,林業改良指導員や道立林業試験場が毎年,定期的にクリタマバチの分布の広がりと被害状況について調査を行なってきた。
この調査結果にもとづぎ,館山・佐々木(1965)は1965年の被害発生状況について報告し,また館ら(1966)は北海道では虫えいが小さく,虫房数も少ないこと,幼虫の死亡率が高くて被害は全般に軽微なことなどを指摘した。さらに館・上条(1973)は,これまでの発生場所を図示し,分布の広がり方は依然として緩慢なこと,品種別の被害程度などを報告した。
クリタマバチは現在も徐々にではあるが,分布を拡大しつつあり,また被害が増加する地方もあると思われるので,調査は続けられているが,一応この辺でこれまでの結果をまとめて報告したい。
なお報告にあたって,調査資料を提供していただいた道林務部造林課の館山一郎氏,および現地調査に御協力下さった関係諸機関と栽培者の各位に心から感謝申し上げる。

エゾヤチネズミ繁殖活動 3.秋の繁殖活動の地域差(PDF:1.22MB)
藤巻裕蔵
P37~45
これまでにエゾヤチネズミの春と夏の繁殖活動に地域差があることを明らかにしたが(藤巻1972,1973),これにつづき,ここでは秋の繁殖活動について報告する。
この報告をまとめるにあたり,ネズミ類の採集,送付などご協力いただいた函館,倶知安,留萌,旭川,美深,池田,北見,厚岸の各林務署,森,胆振西部,旭川,名寄,留萌中部,北見,根室北部の各林業指導事務所の各位,また標本の整理を手伝っていただいた北海道大学農学部応用動物学教室の出羽寛氏,貴重な資料をおかしいただいた林業試験場北海道支場の桑畑勤氏にお礼申しあげる。

殺そ剤に含まれるリン化亜鉛量の経時変化(PDF:145KB)
鈴木 煕・前崎武人
P47~51
現在,殺そ剤としてもっとも多量に使用されているのは,リン化亜鉛剤(Zn3P2)である。
リン化亜鉛は,乾燥した空気中ではかなり安定した物質であるが,うすい酸などがあると容易に分解し,また,野外でも水などによって徐々に分解して,リン化水素ガス(フォスフィン,PH3)と亜鉛の塩を生ずるとされている(高安1972)。
このリン化水素ガスは無色の悪臭のあるガスで,はげしい毒性をもっている。野そなどがリン化亜鉛殺そ剤を喫食すると,胃内で胃酸(HCl)によりリン化亜鉛が分解してガスが発生し,それによって中毒死するのである。
このため,リン化亜鉛殺そ剤を野外に散布したとき,どの位の期間ガスが発生するかを知ることは,殺そカ,他の動物への影響,土壌残留性を知るうえで重要な問題であると考えられる。
われわれはリン化亜鉛殺そ剤の毒性の変化を調査するため,昭和49 年の夏季と秋季の2回にわたり,それぞれ2ヵ月間リン化亜鉛の殺そ剤および原末を室外に放置し,その中のリン化亜鉛の残存量を経時的に測定した。ここにその概要を報告する。

雲量および日照率から推定した道内主要地の4~11月の日日射量(PDF:338KB)
薄井五郎
P53~58
北海道内では8ヵ所の測候所で10年間の月別日平均日射量が発表されている。しかし測定地が少ないで別の地域では間接法によって知る必要がおこる。間接法では雲量,日照率がパラメーターとして使われる。ここでは5つの方法による推定値とロビッチ式日射計による実測値との比較検討を行なったのち,日射量が未測定の19都市について推定した結果を表でしめした。
なお,この報文は森林の水環境に関する研究の一環として行なわれたものである。