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北海道林業試験場報告-第11号-

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第11号(昭和48年6月発行)

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北海道におけるカラマツ施業法に関する研究(1)-カラマツ育林経営上の自然的立地区分(PDF:1.02MB)
小林正吾
P1~18
一般に育林経営は,2元の経営条件の上に成り立っている。その1つは林木の生育に影響をおよぼす自然環境条件である。他の1つは,その経営を支える経済的条件である。育林経営は,この2つの条件の複合した上に立地し,具体的な生産活動が営まれる。とくに,育成林業の場合,自然的立地条件は,林地に固有なものであり、造林樹種の選択とその生長などを規制し,育林施業の仕組を決定づける一次的条件となる。一方,経済的立地条件は,林地から木材市場までの経済的距離,生産物販売や資材・労働力などの調達条件などがあげられる。この条件は,育林の生産目標や施業の集約度を定める条件として作用するが,開発の進展や社会経済の動きに応じて変化する動的な条件である。
北海道におけるカラマツ造林地は,全造林面積の約40%に当る47万ha(北海道林業経営協議会 1973)に達し,郷土樹種のトドマツと並んで主要な造林樹種の座を占めている。これらのカラマツ林は,短伐期のエース樹種として,戦後急速に民有林を中心に普及してきたものである。従来,20年生前後で主伐が行なわれ,坑木を主とし,足場丸太,電柱材,地杭など丸太のままで利用されてきた。そのため,材質の向上を促すための特別な育林技術の発展はみられなかった。たとえば,良質材の生産に欠くことができない技打ちは慣行化せず,また,陽樹であるカラマツに適した独特な間伐方法の発展もなく,間伐の遅れがちな林分が多くみられる現状にある。
近年の相つぐ炭礦の閉山や代替品の進出によって,丸太の需要は低下し,これにかわって,製材原木としての利用が開発されてきており,さらに建築用の構造材としての利用が注目されている(北海道林務部造林課 1969,井関 1970,小野寺 1970,鈴本 1970,大野 1973,山崎 1973)。このように,カラマツ材の用途の主流は,小中径級の丸太から,製材原木へと変化し,さらに大径木の構造材にウェイトが移る趨勢にある。カラマツ育林経営は, この需要構造の変化に対応して,製材あるいは構造材に適する材を生産する育林技術の導入が迫られている。その対応策の1つとして,従来のカラマツに対する観念から脱した長伐期のカラマツ林施業の採用が論議されている(加納 1970,田村 1970,柿原 1973)。しかし,建築材を目的とする良質な大径木の生産は,単に現存する林分の伐期の延長のみで果されず, 自然的立地条件と関連するカラマツ林分生長―とくに伐期延長後の生長-の検討を通じて施業方法を見いだす必要がある(小林・阿部1972,柿原1972)。
農業生産技術的な一斉造林方式が可能なカラマツ造林は,植栽方法が容易でまた比較的立地適応性が高く,そのため北海道の全域に広く造林されてきた。1960年頃から大発生をみた先枯病のまんえんによって,それまでの無性向なカラマツ造林も適地選定の重要性の示唆をうけ,また,カラマツ材の需要構造の変化によって,その経済的立地条件に変化を余儀なくされてきている。
以上のように,北海道におけるカラマツ育林経営は,いわば1つの変換期を迎えており,新しい発展方向への模索の時期でもある。本研究は,こうした背景をもとに,はじめに述べた育林経営の立地論的視点に立ち,北海道におけるカラマツ育林経営上の立地条件に再検討を加え,それに適応したカラマツ林施業法の体系化を目指して着手したものである。この研究の展開過程は,まず育林施業の一次的条件である自然的立地条件の地域性を明らかにすること。つぎに,地域ごとにカラマツ林分の生長傾向を調べ,それらの生長過程をあらわしうる,また,現実林分の生長予測の能力を具備する林分生長モデルを作成する。このモデルに経済的な経営条件を組み入れて,カラマツ林の施業を組み立て,各施業法の経済効果を評価することを最終目標とするものである。
今回は,研究の第一段階であるカラマツ育林経営上の自然的立地条件について,主に既往の文献や調査資料によって,その構成因子の地域性に検討を加えた。さらに,それらの分布状態から,地域区分を試みたので,結果を報告する。

森林の騒音減衰効果に関する研究(PDF:529KB)
前崎武人・鈴木 煕・鈴木悌司
P19~30
われわれの生活環境では,交通機関による騒音,工場騒音,建設騒音,商業宣伝の騒音などさまざまな種類の騒音が発生している。こうした騒音は,近時,人間活動の活発化にともなってますます増大化,多様化の傾向を示し,人の健康をおびやかす公害として問題となってきている。
騒音を防止,軽減するためには,まず第1に発生源自体を規制すべきことはもちろんであるが,騒音の伝搬をしゃ断することも必要である。このため,騒音防止工学の分野では,さまざまな騒音しゃ断施設が研究されている。
しかし,森林を騒音しゃ断施設として利用することの効果,すなわち森林自体による正味の騒音減衰量についての調査研究は,国内では公表されたものはほとんどみあたらないようである。国外でもこの問題を直接扱った調査研究は少なく,EMBLETON(1963),COOK et al.(1971),EYRING(1946),WIENER(1960)による研究など,わずかに数編のものがあるにすぎない。しかも騒音防止工学の分野では,森林による騒音減衰効果については,否定的な立場が多く,たとえば前川(1968)は,「騒音を防ぐ目的で植樹帯をつくることがあるが,その効果は疑問である。」としている。
しかし,森林による騒音減衰効果は,樫山(1972)がEMBLETON やCOOK et al.の調査結果から,「森林の騒音減衰機能は,物理量として明確に識別できる程度の大きさを持っている。騒音防止工学方面の通説として,防音効果はほとんど無いとされるのは,幅の狭い樹列の効果が現行の各種防音工事の効果に比べて,比較にならないためと解される。」と指摘するように,まったく皆無というものではないし,さらに森林には気象緩和効果などの公益的効用もあることから,防音林を造成することは,決して無駄ではないと考えられる。
筆者らは,昭和47年度において,北海道生活環境部自然保護課から依頼された「生活環境における緑地機能の実証的調査研究」をとりまとめるのにさいし,森林が交通騒音の軽減に対してどの程度の効果を果たすかについての調査を行なったので,ここにその概要を報告する。
なお,この調査の実施にあたり,道立公害研究所の白川研究員にはいろいろとご指導をいただき,また,道商工観光部工業課,道立公害研究所,苫小牧・室蘭の各保健所,旭川市役所からは測定器材を借用する便宜を与えていただいた。ここに厚くお礼を申しあげる。

トドマツ苗タイプの指数化とその生長能力との関係(PDF:534KB)
畠山末吉
P31~44
育種における品種や系統の検定は,収集した多数系統の中から,優れた育種材料をえらぶうえで重要である。しかし,収集した多数系統の多数形質についての検定は労力,費用,年数の点から実際上容易でない。そこで,系統や品種の特性の分析,あるいはタイプによる分類から能力がたかいと予測される材料をある程度適確に評価できれば,育種能率向上の面で意義が大きいと思われる。
農作物には草型による分類があり,この草型は,収量や栽培特性などに密接に関係するとの報告が多い(TSUNODA,1962;JENNINGS,1964;MORISHIMA et al.,1967;THSENG and HOSOKAWA,1972)。
林木では,トドマツ(Abies sachalinensis)苗の品質区分に“よい苗木”という,あいまいで,概念的な表現がつかわれている。これは主観的であるが,苗木の総合印象による表現であるから,農作物における草型と概念的におなじ意味と考えられる。
トドマツの次代検定で家系別に育苗したものをみると,各家系はいろいろなタイプをしめすことに気づく。このタイプは,形態や生理的特性の総合値の表現(MORISHIMA,1967)と考えられるから,うえにのべた農作物の草型や“よい苗木”と概念的におなじものと考えられる。
しかし,“よい苗木”は得苗率とともに,育苗における目標であるが,造林木としてたかい生産力や適応性をもつとの確証がないため,林木の育種では重要に考えていなかった。
本報では,形質の総合がしめす苗木のタイプの生産力や適応性に関する意義を考える手はじめとして,造林木として生長量が大きい家系の,苗畑におけるタイプを検討した。まず,主成分分析法によって,概念的なトドマツのタイプを客観的に表現する試みをおこなった。さらに,とりだされた主成分の生物学的特性を検討し,主成分スコアでトドマツのタイプを評価することの有効性をたしかめた。また,トドマツのタイプをあらわすと考えられる主成分スコアとそれに対応する系統群の造林ごの樹高生長の関係を検討した。
植物の分類に主成分分析を適用した研究はいろいろみられる。たとえば,望月・奥野(1967)は主成分分析によって品種分類が客観的になるとのべ,MORISHIMA(1967)らは主成分分析によって草型の遺伝変異をあきらかにし,草型の季節変化や生長の潜在能力の関係について報告している。

北海道に自生しているハクサンシャクナゲの生態について(PDF:1.03MB)
中内武五朗・斎藤 晶・開本孝昭
P45~54
シャクナゲはツツジ科 Ericaceae,ツツジ属 Rhododendron で北半球にきわめて多く自生し,その種類はおよそ600種ともいわれ,もっとも品種の多いところはヒマラヤ地方である(上原1959)。
一般にシャクナゲは3m以下の灌木であるが,なかには樹高15m,直径1.6mの喬木もあると報告されている(上原1959)。北海道にもシャクナゲが自生しているが,その品種は少ない。これを代表するものに,キバナシャクナゲ(Rhododendron aureum GEORGI.)と,ハクサンシャクナゲ(Rhododendron fauriae FRUNCH.)の二種類がある。キバナシャクナゲは,その名のとおり小さい黄色の花をつけ,道内の1,000m以上の高山地帯に分布し,常緑の匍匐性灌木で高さは30~50cm程度である。また色のよい葉は長楕円形,全縁無毛,特に葉脈の深いしわと裏面の淡紅色は格別であることから珍品として知られている。生育地は国有林であり,しかも特別保護地帯のため一般には入手しがたく,その価値は高く評価されている。
また,ハクサンシャクナゲは,キバナシャクナゲより環境のよい場所に生育している。常緑の灌木で,樹高は1~3mが普通である。花は乳白色から淡紅色まであり,5~15個の花序数をもっていてほとんどのものが内部に淡緑の斑がはいる。キバナシャクナゲとことなり直射日光をきらい樹陰地によく生育する。庭園用花木としての価値も高い。
近年花木栽培がブームをよび多くの入の注目するところとなった。筆者らは1967~1971年,優良個体を選抜し,従来難しいといわれていた増殖方法と,育種材料としての価値などを明らかにするため,自生地での生態を,調査した結果を報告する。本調査にあたってご協力を賜わった浦河,金山,大雪の各営林署,浦河,北見各林務署および,日高,上川,十勝各支庁の各位に謝意を表する。

省力造林に関する研究(5)-伐採前地拵えに対する除草剤の適用-(PDF:706KB)
森田健次郎・高橋幸男・水井憲雄
P55~71
人工林の造成において,地拵えや下刈における刈払い作業は,労力,経費ともに育林作業中に占める割合は極めて高い。このような育林作業の省力化と経費を節減するために,機械の導入とともに除草剤の活用が検討されてきた。林業苗畑における育苗作業中,除草剤の導入によって,除草功程が大きぐ省力された効果は高く認められている。林地においては,上壌,気象などの環境条件が複雑であり,したがって林地の植生は,生態的にも千差万別で取り扱いは地域により,同一地域でも方位や,山腹,山麓などで多岐にわたる。
これらの植生に対して除草剤を適用するためには,薬剤が殺草作用におよぼす植生への選択性,散布の簡便さ,造林木に対する薬害の回避,人体などに対する安全性を考慮しなければならない。したがって,薬剤による除草効果を高めるような散布量や散布時期を検討し,同時に森林の生態系全般におよぼす影響など,解明しなければならない問題点は多い。
北海道のササ型植生に対する薬剤除草の方法として,一般に実用化されているのは,植栽後の下刈に対して人力による手刈を薬剤におきかえるばあいと,天然下種更新に対して,刈出し作業を薬剤によって行なうばあいとが主なものである。
この試験は,低質広葉樹林の林種転換林分として人工林を造成するとき,ササ型植生の地拵え作業と,植栽後のある期間の下刈作業を省力できないかどうかを検討するために,伐採前の地拵えとして林地除草剤の適用を試みたものである。
除草剤は既に実用化のめどのついたものを選び,植生の状態,土壌型を考慮して,除草剤の散布時期と散布量を変えて,植生の推移について調査し,除草剤導入を前提とする育林作業体系の確立をはかろうとするものである。
なお,この試験は,1968年から1970年まで3年間,国費の助成をうけて行なった課題研究の結繋のなかからとりまとめたものである。1968年には,道有林美深経営区内,1969年には岩見沢経営区内,1970年には当別経営区内にそれぞれ試験地を設定したもので,試験地設定後3年間にわたって継続調査を行なった美深経営区における試験地の調査結果を主としてとりまとめた。
試験地の設定や,調査に際して多大のご協力を賜わった道有林二課試験係長の杉本氏をはじめ,美深林務署,岩見沢林務署,当別林務署の造林課のかたがたに感謝の意を表する。

トドマツ苗畑における放射状態(PDF:258KB)
薄井五郎
P73~76
森林や苗畑から失われる水分を気象条件から熱収支式を利用して定量するときにもっとも重要な項目は,純放射量である。純放射量は直接に純放射計を使って測定することができるが,下記のようにいくつかのパラメーターから間接的に求めることもできる。この方法は任意地点の鈍放射量を推定するときに有力である。
ここでは苗畑の水収支に関する研究の一環として純放射量を中心にして測定した結果を報告する。

カラマツ林分における単木の胸高直径生長量と隣接木の距離との関係(PDF:1.46MB)
阿部信行
P77~88
人工林における立木の生長は,生長経過とともに密度によって大きな影響をうける。
筆者(1972)は,カラマツ15年生幼齢林分を対象に,単木の胸高直径生長量と,密度を隣接木までの距離として表示した場合の相関について分析し,有意な相関関係がみられたことを報告した。対象林分が幼齢林であったため相関係数の値が低く,より高齢級になる程,値も安定してくることを示唆しておいた。
そこで,今回,前報告の調査林分中に,新らたに試験区を設定し,この幼齢林分と対比させながら,カラマツ高齢林分での同様の分析を試みた。その際に,相関の高かった高齢林分に対し,胸高直径値とSPURR(1962)の point density との関連も調べたので報告する。
用いた電子計算機はNEAC2200‐500であり,計算に際し,種々の御便宜をおはかり頂いた道林務部太田馨主査に厚く御礼申し上げる次第である。
なお,本報告の一部は,第21回日本林学会北海道支部大会で発表した。

林木の寒さの害に関する研究(3)-カラマツ苗木の生長調節による霜害防除-(PDF:490KB)
森田健次郎・水井憲雄
P89~96
林木の生長型は大きく2つのグループに分けられ,その1つは生長に適した条件(光,温度)のもとでは連続生長が可能であり,生長とともに葉が分化していくポプラ型のものである。もう1つは生長と同時に葉の枚数が増加しにくく,冬芽のなかにある葉の原基を展開するだけの生長を示すマツ型のものとがある(永田1969,花房1972)。
カラマツの場合は前者のグループに入り,長日条件におくと連続生長を示し,なかなか生長を停止しない。北海道は約42°Nから45゜Nの間にあり,その自然日長は夏至付近で16~17時間である。9月末になると13時間くらいの日長となり,カラマツは短日光に反応して生長を停止する。しかし気象条件のきびしい北海道では9月末頃になると降霜の危険があり,生長を停止していないか,あるいは停止した直後のカラマツは耐凍性が十分に高まっていないため,被害をうけやすい。これを早霜害といって,道東地方の苗木生産に大きな障害となっていた。
カラマツの早霜害防除法についてはすでに多くの試みがあるがいまだに決定的な方法が確立されていない。
筆者らは林木の耐凍性の増大と林木の生育過程との間に密接な関係があることから,カラマツの苗木について,生長の停止,冬芽形成,木化,紅葉などを早める方法として,化学薬剤の散布,および日長の操作を行ない早霜害防除を検討した。

サクラ(関山)にみられる胴枯,枝枯性の病害(PDF:1.50MB)
小口健夫
P97~111
サクラは古来から我が国の国民性と一致した花として,各地に植栽され,また国花に選定されている。このためふるくから,在来種のほかに種々の変種,品種が育成され,観賞用として珍重されてきた。したがってサクラの病害については,天狗巣病をはじめとするサクラに寄生する Taphrina 属菌の病害,穿孔性褐斑病,うどんこ病などの葉の病害,萎凋病,根頭がんしゅ病,こうやく病など多くの報告がなされている。北海道にはエゾヤマザクラ(Prunus sargentii REHDER)をはじめ8種の在来種があるといわれている。このほかに道南地方を中心にして,種々の品種が導入あるいは育成されている。北海道におけるサクラの病害に関する報告は少なく,西田(1911)が天狗巣病,シウリザクラ,シロザクラの嚢果病,本間(1937)がうどんこ病について報告し,胴枯性病害は逸見(1916)が癌腫病菌であるValsa japonica MITABE et HEMMI を報告しているにすぎないと思われる。
筆者はかねてからサクラの病害に注意をはらってきた。たまたま当場内に1963年に並木として植えられたサクラの関山[Prunus lannesiana f. Sekiyama(KOIDZ.)HARA]に,この数年来,枝あるいは幹の枯死するものが続出した。このため1971年6月,これらの被害調査をおこなうとともに,多数の標本を採集し,加害菌の同定をおこなった。その後同樹種上で DiaportheDermea 両属の標本をうることができた。この報告はこれら完全世代の標本を基にし,不完全世代の標本を参考にして同定をおこなうとともに,これらの菌の分離株を用いて,2,3の培養上の性質に関する実験,雨水による分生胞子の分散調査,接種試験をおこなったのでその結果をとりまとめたものである。

トドマツを加害するオオトラカミキリ(PDF:318KB)
上条一昭・鈴木重孝
P113~119
オオトラカミキリ(Xylotrechus uillioni VALLARD)は非常に稀な種類であって,これまで全くその生態はわかっていなかった。しかし1967年,苫小牧林務署管内のトドマツ造林地に多発した枯死木がこのカミキリムシによるものと確認され,さらに1969年に行なわれた北海道林務部の合同調査によって,同林務署管内のトドマツ造林地に広く被害がみられ,中には被害木が5割に達している林分のあることが判明した。筆者らはひきつづき道内各地のトドマツ林を調査した結果,天然林のトドマツに大きな被害のあることがわかった。
カミキリムシの中で,針葉樹の生立木を加害する例としては,スギカミキリ(Semanotus japonicus LACORDAIRE)が有名である。スギの材が変色,腐朽するいわゆる「スギのハチカミ」はスギカミキリの加害が主な原因であるが(ハチカミ共同研究班,1971),オオトラカミキリの加害木にも同様な材の変質がみられ,大きな害を与えていることがわかった。以下,これまでに判明したオオトラカミキリの生態と被害状況を述べてみたい。
本文に先立ち,調査に御協力いただいた北海道林務部道有林第二課試験係,苫小牧林務署造林課,このほかの関係林務署の造林課の各位,および種々御助言をいただいた林業試験場北海道支場の余語昌資,山ロ博昭,小泉力の各氏に深く感謝の意を表する。

エゾヤチネズミの繁殖活動 2.夏の繁殖活動の地域差(PDF:1.48MB)
藤巻裕蔵
P121~131
前報(藤巻 1972)では,エゾヤチネズミ Clethrionomys rufocanus bedfordiae の春の繁殖活動に,北海道の南部から北部へ,また西部から東部へ向かって徐々に変化する地域差があることを明らかにした。今回はこれにつづいて,夏の繁殖活動にみられる地域差について報告する。
この報告をまとめるにあたり, ネズミ類の採集,送付などいろいろと御協力いただいた函館,倶知安,留萌,旭川,美深,北見,池田,厚岸の各林務署および森,胆振西部,旭川,名寄,留萌中部,北見,大樹の各林業指導事務所の各位にお礼申しあげる。

北海道において樹木に寄生する胴枯病菌科の菌類目録(PDF:30KB)
小口健夫
P133~138
北海道において,胴枯病菌科の菌類は,樹幹あるいは樹枝を枯死させる病原菌として重要である。小林(1970)は日本でしられる,この科の菌類を分類学的に詳細に記述している。
この目録はいままでに採集した標本あるいは,病害診断依頼をうけた標本をもとに,さきの小林の論文中での北海道でえた菌類,寄生を加えたものである。
1.胴枯病菌科菌類の分類大系および学名は,小林享夫(1970):日本産ディアポルテ菌科(胴枯病菌科)菌類の分類学的研究によった。
2.寄主植物の学名は,大井次三郎(1953):日本植物誌により,これにないものは上原敬二(1959):樹木大図解,森田健次郎(1962):北海道光珠内林木育種場樹木目録(光珠内林木育種場報告No.1)によった。
3.目録中*印の菌は小林の論文から引用したものである。