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北海道林業試験場報告-第15号-

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第15号(昭和53年3月発行)

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林木のメバエの生育に及ぼす光質と庇陰の影響(PDF:336KB)
水井憲雄
P1~8
林木の生育に影響を及ぼす環境要因としての光は,光強度,日長,光質(波長組成)が,それぞれ重要な役割をはたしている。
林内光の波長組成は林冠を通過する際に吸収あるいは反射されるため,入射光のそれと異なることが注目されてきた。このような差異は季節,日中の時刻あるいは気象条件などによって変化するが,林内散光の波長組成は針葉樹林,広葉樹林とも700nm以下の波長城が著しく減少し,遠赤色光の割合が相対的に高くなると報告されている(FEDERER&TANNER 1966,森川 1976)。樹冠閉鎖の程度にもよるが,林床では林外と異なった波長組成の光条件下で稚樹が生育しており,その生育にたいする波長組成の影響を明らかにすることは,林内更新を考えるうえで重要である。
光強度と日長についてはこれまでにもいろいろな研究があったが,光の波長組成にたいする林木の生育反応についての実験的研究は限られている。古く,原田(1939)は林内光の性質とトドマツ稚樹の生育について調べ,橙色光で稚樹の生育が良好であると報告している。最近,浅川ら(1974)は制御環境下において光の波長組成にたいするダケカンバ,クロマツ,トドマツなどのメバエの生長を調べ,樹種によって,また,日長や温度条件によって生育反応が異なることを報告した。さらに,森川ら(1976)は特定の波長組成の光の照射強度をかえてクロマツとシラカンバのメバエの生長を調べ,照射強度の増加にともなう上胚軸の生長が,波長組成によって異なることを報告した。
ここでは,制御環境下において可視城の照射強度を調節し,さらに特定波長城を除去してケヤマハンノキとカラマツのメバエの生育反応について実験を行なったので報告する。
この実験は農林省林業試験場造林部において行なった。ご指導をいただいた種子研究室長浅川澄彦博士,造林第一研究室員森川靖博士,種子研究室員長尾精文技官に厚くお礼申し上げる。

マイマイガ大発生の終息過程の死亡要因(PDF:321KB)
東浦康友・上条一昭
P9~16
マイマイガは広葉樹林やカラマツ造林地でたびたび大発生してきた。多くの場合,大発生は急激に終息することが知られており,同じ林分が何年も統けて被害をうけることは少ない(篠原 1964)。
1973年に北海道富良野盆地の5ヵ所で大発生があった。いずれも5~15年生の若いカラマツ造林地で数ヘクタールが丸坊主にされた。さらに1974年にも2ヵ所で同じような局所的な大発生があった。これら7ヵ所とも丸坊主になったのは1年かぎりで,大面積にひろがることなく終息した。ここで報告する中富良野町中富良野での,2年間の終息の過程はこれらの典型的な1例であったと思われる。
この研究を行うにあたって,林業試験場浅川実験林の片桐一正室長に天敵微生物の同定をしていただいた。厚く感謝の意を表する。

エゾヤチネズミ発生予想の検討-旭川林務署管内予察資料から-(PDF:88KB)
中田圭亮
P17~25
北海道のノネズミの発生予察事業は1954年(昭和29年)より本格的に始まり,これらの予察資料をもとに全道的なエゾヤチネズミの発生状況が把握されてきた。
しかしながら,地域ごとに数年次の予察資料を検討した報告はいままでにほとんど発表されていない。最近になり,国有林北見営林局清里営林署管内については前田(1975)が,同じく帯広営林局管内については小川(1976)がそれぞれ5年間の予察資料からノネズミの発生状況をまとめ報告した。このような予察資料のとりまとめは,防除の基礎として地域ごとのネズミの動態を知る上で大切なことである。
また,現在,北海道内を広域の5ブロックに分けて出されているエゾヤチネズミの発生予想式も狭域的には妥当なのかを検討するとともに,具体的な事業実施の単位ごとにも予想式を出す必要があろう。
このような視点で,道有林旭川林務署管内の1969年(昭和44年)から1976年(昭和51年)にいたる8年間の予察資料についてエゾヤチネズミの発生状況をまとめるとともに,狭域的な発生予想式の算出を試み広域的な予想式との比較を行ったので,ここに報告する。
資料を提供していただいた旭川林務署造林課,林務部道有林第二課の各位ならびに本稿について御助言いただいた林業試験場北海道支場鳥獣研究室の樋口輔三郎博士にお礼申し上げる。

胆振,渡島地方における防災林造成法の研究(PDF:1.11MB)
伊藤重右ヱ門・新村義昭・成田俊司
P27~45
この報文は,北海道における防災林造成法に関する研究の第6報であり,現地調査は,防災林造成技術のための地帯別区分(伊藤・斎藤 1971)で太平洋岸中部に位置する胆振,渡島地方の民有林および鉄道林の中から選定した林分を対象として,1975年と1976年に行われた。
この研究のまとめに当り,北海道治山課をはじめ現地調査を支援された胆振支庁および渡島支庁林務課森林管理係,室蘭市農水産課,当場大島紹郎研究員の各位に深く謝意を表する。