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道南農業試験場

第5回道南農業新技術発表会

主催:道南農業試験場

  • 日時:平成15年1月31日(金)13:00~16:00
  • 場所:大野町農業振興センター

 第5回道南農業新技術発表会は、1月31日、朝方までの大雪で除雪作業にお忙しい中、道南圏の生産者約65名、JA・諸団体約30名、一般町民5名、市町村・支庁・国関係者約25名、農学校・町技術センター・普及センター・研究機関約70名のご参加をいただき、無事、終了いたしました。誠にありがとうございました。


発表会の内容

  • 発表課題 :
    1. 新技術
      1. 水稲新品種候補「渡育240号」の特徴  (尾崎洋人)
      2. いちご新採苗法と「けんたろう」栽培指針  (中住晴彦)
      3. 持続生産をするための堆肥評価と下層土診断  (林 哲央)
      4. 下層土還元消毒法の開発とその防除効果  (新村昭憲)
    2. 新技術の検証・成果
      1. 熱水を利用したハウスクリーン作戦  渡島中部 山黒良寛
      2. 馬鈴薯産地の生き残りをかけた戦略  檜山南部 長濱修
    3. トピックス
      1. 本年発生に注意を要する病害虫  (萩田孝志)
      2. トマト栄養診断マニュアルの紹介  (坂口雅巳)

  • 会場の様子


    要約

    新技術

    水稲新品種候補「渡育240号」の特徴

    作物科 研究職員 尾崎洋人

     「渡育240号」は晩生の良質良食味うるち系統であり、食味が「きらら397」に明らかに優り「ほしのゆめ」並からやや優る。タンパク含量が低く、耐冷性が「きらら397」より明らかに強い。また、収量性はほぼ「きらら397」並で、「ほしのゆめ」に優るため、道南南部のコメの良質良食味安定生産が期待される。

    いちご新採苗法と「けんたろう」栽培指針

    園芸環境科 科長 中住晴彦

     ハウスの中で、土の代わりに「もみがら」を使って採苗する新しい採苗法「もみがら採苗法」を開発した。「もみがら採苗法」は子苗の発根を制御することによって子苗の生育を制御し、1次苗(太郎苗)の採苗を可能にした。「もみがら採苗法」は、露地採苗法に比べて採苗本数が多く、良質で揃いの良い苗が生産できる技術である。また、平成12年に道南農試で育成された高品質品種「けんたろう」の普及を促進するため、かん水方法などの「栽培指針」を策定した。

    持続生産をするための堆肥評価と下層土診断

    園芸環境科 研究職員 林哲央

    施設栽培における、牛糞尿由来の完熟堆肥を施用したときの窒素およびリン酸減肥技術と、深さ20~60cmの下層土に残存する硝酸態窒素の診断に基づいて、野菜を長期栽培したときの追肥窒素の減肥指針を作成した。

    下層土還元消毒法の開発とその防除効果

    病虫科 研究職員 新村昭憲

     0.6%の糖蜜溶液を液肥混入器によって150mm土壌中に潅注し、土壌表面を透明なフィルムで被覆、ハウスを閉めきり地温を25~30℃まで上昇させると地表下50cmのFusarium oxysporumVerticillium dahliae、青枯病菌を消毒することが可能である。サツマイモネコブセンチュウでは、フスマを用いた還元消毒で作土層の消毒が可能である。

    新技術の検証

    熱水を利用したハウスクリーン作戦

    渡島中部地区普及センター 山黒良寛 氏

     土壌病害虫は、高温では短時間で、低温(最低死滅温度)でも長時間接触させると死滅する。そこでこのような消毒効果が期待できる熱水を利用し、その効果と有効深度を確認した。

    馬鈴薯産地の生き残りをかけた戦略

    檜山北部地区普及センター 長濱修 氏

     檜山の馬鈴しょは、厚沢部メークイン、今金男爵として市場評価を受けてきた。しかし、作付面積からみると道内での占有割合は小さく、近年の価格低迷は馬鈴しょ生産に対し深刻な状況になっており、新たな方向性を見出す必要があった。北海道の中には、皮むけしやすい早出栽培において、機械収穫を行っている地域は何処にもない。馬鈴しょ早出機械収穫栽培体系を確立するため、機械収穫を前提とした栽培の見直し、収穫機械の検討、皮むけに対する茎葉処理法の検討等を行ってきた。結果として、労働時間短縮と労力軽減効果を明確にできたとともに、作付面積の拡大で農業所得の向上が図ることができる。これらは、雪解けの早い檜山の気象条件、地域性を生かした、馬鈴しょ産地の生き残りをかけた戦略の1つになるであろう。

    トピックス

    本年発生に注意を要する病害虫

    研究部 主任研究員 萩田孝志

     平成15年度に特に注意を要する病害虫:①小麦の赤かび病 ②小麦うどんこ病のストロビルリン系薬剤耐性菌の出現 ③オキソリニック酸水和剤に対する各作物の軟腐病菌の感受性低下 新たに発生を認めた病害虫:水稲のアカスジカスミカメ(新発生)、ほうれんそうのべと病(新レース)、ねぎ、にらのネギアブラムシ(新発生)、菜豆のケブカチチュウワタムシ(新発生)、はぼたんの黒腐病(新発生)、ひまわりのクロゲハナアザミウマ(新寄主)

    トマト栄養診断マニュアルの紹介

    園芸環境科 研究職員 坂口雅己

     栄養診断技術導入の有効性について、大野町の農業後継者に実践してもらい減肥、収量、経済性、環境への影響を評価した。また、実践の際に問題となる点を整理し、指導者や生産者グループを対象とした「ハウストマト窒素栄養診断マニュアル」を作成した。


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