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道南農業試験場

第12回道南農業新技術発表会

主催:北海道立道南農業試験場
場所:北斗市農業振興センター
平成22年2月25日(木) 13:15~15:45


 第12回道南農業新技術発表会は、2月25日、生産者等、JA・諸団体、市町村・支庁・国関係者、農学校・町技術センター・普及センター・研究機関など117名のご参加をいただき、盛会のうちに終了いたしました。誠にありがとうございました。
 それぞれの講演の要旨はhtmlファイルで掲載しています。

場長

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発表課題

  • 「ななつぼし」直播栽培で低タンパク米生産!  要旨
  • スプレーカーネーションの二年切り栽培にチャレンジ!  要旨(HTML)(PDF)
  • 遮光で品質向上!シネンシス系スターチスの栽培技術  要旨
  • 新品種の紹介 大粒・多収で病気に強い小豆新品種「十育155号」  要旨
  • 期待の果樹!新しいブルーベリー・プルーンの品種」  要旨 ブルーベリープルーン
  • 平成21年度の発生にかんがみ注意すべき病害虫  要旨
  • 渡島管内におけるマメシンクイガの発生実態  要旨
  • 09檜山管内における天候不順に対応した現地事例  要旨

発表会の内容

1 新品種・技術

1)「ななつぼし」直播栽培で低タンパク米生産!

  ……作物科 菅原 彰

ななつぼし

2)スプレーカーネーションの二年切り栽培にチャレンジ!

  ……作物科 高濱雅幹

カーネーション

3)遮光で品質向上!シネンシス系スターチスの栽培技術

  ……作物科 菅原章人

スターチス

4)新品種の紹介 大粒・多収で病気に強い小豆新品種「十育155号」

  ……作物科長 荒木和哉

155号

5)期待の果樹!新しいブルーベリー・プルーンの品種」

  ……技術普及部長 山口作栄

果樹

6)平成21年度の発生にかんがみ注意すべき病害虫

  ……病虫科長 安岡眞二

病害虫

2 トピックス等

1)渡島管内におけるマメシンクイガの発生実態

  ……渡島農業改良普及センター渡島南部支所 主査 北島 潤

マメシンクイガ

2)09檜山管内における天候不順に対応した現地事例

  ……檜山農業改良普及センター 主任普及指導員 五十嵐強志

09天候不順

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講演要旨


「ななつぼし」直播栽培で低タンパク米生産!

北海道立道南農業試験場 技術体系化チーム

1.試験のねらい

 道南は秋の気候が温暖なため、道央部では困難な、中生良食味品種を用いた湛水直播栽培が可能である。このため道南の広い範囲で「ななつぼし」の湛水直播栽培を実証し、その特徴や留意点を取りまとめた。

2.試験の方法

(1)試験年次:2007~2009年

(2)試験場所:道南農試および現地(北斗市、七飯町、江差町、厚沢部町、乙部町、今金町)

(3)供試品種:「ななつぼし」

(4)播種量:9~10kg/10a

(5)施肥量:窒素量で5.6~8.8kg/10a(うち側条施肥量は窒素量で2.8~4.0kg/10a)

(6)供試肥料:BB472LP、BB552LP、UF474、UF585、BB544、472、264、444

(7)播種条間:20cm

3 試験結果

(1)「ななつぼし」直播栽培では、出穂期は「きらら397」直播栽培と同等であった。したがって、「ななつぼし」直播栽培の適地は、直播栽培適地マップ(平成16年普及推進事項)の「きらら397」と同じである。また、道南農試における奨励品種決定試験の結果では、「ななつぼし」直播栽培は移植栽培に比べ、タンパク質含有率は1.2%低く(図1)、アミロース含有率は2.2%高かった。


図1 栽培法による収量、タンパク質含有率の比較
  (道南農試2001-2008年)

(2)2007年から2009年にかけて、道南農試と現地実証圃合わせて81区の「ななつぼし」湛水直播栽培試験を行った。全試験区の平均は、苗立ち本数が163本/m、収量が466㎏/10a、m当たり籾数が30,800粒、穂数が634本/m、タンパク質含有率が6.4%であった。全体の73%にあたる64区が、湛水直播栽培で利益が出る収量(420kg/10a)を上回った。また全体の88%にあたる71区が、低タンパク米基準の6.8%以下であった(図2)。さらに、現地試験の「ななつぼし」湛水直播栽培は、現地の奨励品種決定試験の移植栽培に比べ、タンパク質含有率が低かった。収量はやや低かったが、年次間のばらつきは小さかった(図3)。以上より、「ななつぼし」湛水直播栽培は、低タンパク米を安定生産できる実用的な技術と判断した。


図2 「ななつぼし」直播栽培における収量とタンパク質含有率(農試および現地)


図3 「ななつぼし」直播栽培と移植栽培における収量とタンパク質含有率の年次変動(檜山南部)

(3)この試験結果から、目標収量を500㎏/10a、目標タンパク質含有率を6.8%以下とした場合の栽培指針をまとめた。目標達成に必要な苗立ち本数は200本/m、穂数は700本/m、m当たり籾数は27,000~30,000粒であった(表1)。この栽培指針は、「道南地域における湛水直播栽培指針」(平成19年普及推進事項)と同じである。

表1 「ななつぼし」の湛水直播栽培指針

(4)新規導入地区(檜山北部)では、導入初年目の2007年は苗立ち本数不足、2008年は千粒重の低下により、収量が約350kg/10aと低収であった。種子の準備から播種までの作業精度が向上した2009年は、苗立ち本数が148本/m、収量が443kg/10aに増加した。タンパク質含有率は3カ年通して、のべ9圃場中8圃場で6.8%以下であった。また、直播栽培では雑草の防除が問題になるが、雑草発生予測技術(平成11年指導参考事項)に基づき除草剤を選択した結果、雑草害は発生しなかった。

 以上より、 新規導入地域での栽培の可能性を提示するとともに、道南の広い範囲で「ななつぼし」湛水直播栽培による低タンパク米生産が可能であることを実証した。

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スプレーカーネーションの二年切り栽培技術

北海道立花・野菜技術センター 研究部 花き科、道南農業試験場 研究部 作物科

1.試験のねらい

 カーネーションは通常は1年しか採花しないが、同一株から2年にわたって採花する「二年切り栽培法」の導入により、1年あたりの種苗コストを従来の半分に低減できる。しかし採花2年目の株の仕立て法について、これまで道内での知見がない。
 今回の報告では、道内のスプレーカーネーション二年切り栽培技術に関して採花2年目の切り花品質、収量及び作業性を明らかにし、春植え作型では高品質で長期出荷可能な仕立て法を、秋植え作型では採花1年目と同程度以上の収量・品質で省力な仕立て法を提示する。

2.試験の方法

(1)供試品種:「バーバラ」(草勢;強、花色;セリースピンク)、「チェリーテッシノ」(草勢;弱、花色;セリースピンク/白)

(2)春植え作型 1)採花1年目の耕種概要:4月下旬定植、4本仕立てとし8月以降採花、11月に未採花枝を整理し微加温(最低2℃)越冬、2)試験処理区(採花2年目の仕立て法):切り戻し位置(無、5cm、 20cm)、1回半摘心(有、無)

(3)秋植え作型 1)採花1年目の耕種概要:11月上旬定植、1回半摘心栽培により6月から8本採花、11月に未採花枝を整理し二重被覆加温 (最低5℃越冬)、2)試験処理区(採花2年目の仕立て法):切り戻し時期(1月、2月)、切り戻し位置(10cm、20cm、30cm)、1番花整理法(芽整理、枝整理)

3 試験結果

春植え作型

(1)採花2年目の春の切り戻し位置については20cm及び5cmより切り戻し無で規格内収量が多かった(図1)。

(2)採花2年目に1回半摘心を行うことにより採花のピークを分散化することができ、採花1年目よりも早い7月から8月に採花することができた(図2)。

(3)採花2年目の春に切り戻しを行わず1番花の芽整理を行い、1回半摘心栽培を実施することで、規格内収量が多くなった。また、採花1年目と組み合わせることにより長期出荷が可能であった(図1、2)。

秋植え作型

(4)採花2年目の切り戻し時期について、2月は1月より規格内収量が減少した(図3)。切り戻し位置は、10cm及び30cmより20cmで規格内収量が増加する傾向がみられた(図4)。

(5)1番花整理法では、枝整理が芽整理より規格内収量が多く、仕立て作業時間は短かった(図5)。

(6)採花2年目の1月に20cmで切り戻しを行い、前年枝を整理することで規格内収量が多く(図3、4、5)、仕立て作業時間も短かった。この仕立て法により、採花1年目に比べ切り花長及び有効花蕾数はやや減少するが、上位規格(2L+L)及び規格内収量は増加した(図3)。

(7)以上より春植え及び秋植え作型の二年切り栽培における、収量性の優れた採花2年目の仕立て法を図6、7に提示した。


図1 春植え採花2年目の切り戻し位置が収量及び有効花蕾数に及ぼす影響(バーバラ)


図2 春植え採花1~2年目の時期別・規格内収量(バーバラ)
  注)採花2年目は1回半摘心を実施


図3 秋植え採花2年目の切り戻し時期が収量及び有効花蕾数に及ぼす影響(バーバラ)
  注)凡例は図1参照


図4 秋植え採花2年目の切り戻し位置が収量及び有効花蕾数に及ぼす影響(バーバラ)
  注)凡例は図1参照


図5 秋植え採花2年目の1番花整理法が収量及び作業時間に及ぼす影響(バーバラ)
  注)凡例は図1参照


図6 二年切り栽培採花2年目における仕立て法(春植え作型)
注)矢印及びその下の括弧内は試験実施時における加温時期及びハウス内最低温度を示す


図7 二年切り栽培採花2年目における仕立て法(秋植え作型)
注)矢印及びその下の括弧内は試験実施時における加温時期及びハウス内最低温度を示す

4.成果の活用面と留意点

(1)スプレーカーネーション二年切り栽培導入時の資料とする。

(2)本試験は春植え作型を滝川市で、秋植え作型を北斗市で実施した。

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遮光で品質向上! シネンシス系スターチスの栽培技術

北海道立花・野菜技術センター 研究部 花き科

1.試験のねらい

 スターチスは道内における主要花き品目だが、その中でも特にシネンシス系スターチスは近年栽培が増えている品目である。しかし、栽培の歴史が浅いため、北海道での定植適期や越冬性等の栽培特性の情報が不足している。また、8月中旬以降の切り花品質の低下や、越冬作型における株枯れが問題となっている。そこで、シネンシス系スターチスの主要品種の基本的な栽培特性を明らかにし、さらに遮光処理による品質向上、越冬作型の融雪後の株管理法について検討した。

2.試験の方法

(1)主要品種の栽培特性
 5品種を4、5、6月に定植し、「キノブラン」を標準品種として抽台率、収量、切り花品質等を比較した。また、10月中下旬にハウス被覆を外し雪の下で越冬させ、3月中旬に再びハウス被覆を行い雪を溶かして、4月上旬に刈り込み、定植2年目の生育、収量、切り花品質等を調査した。

(2)切り花品質向上に向けた遮光処理
 遮光率30%、50%の資材(ワイエムネット、黒色)を8月上旬から4週間ハウス被覆の上から設置して、遮光資材を設置していない区(無処理区)と比較した。定植時期は5月と7月上旬の2時期を設けた。

(3)越冬株の管理法
 4、5、6月に定植した「キノブラン」を雪の下で越冬させ、融雪後に株を刈り込むことの影響を調査した。刈り込みの有無以外の越冬方法は(1)と同じである。

3 試験結果

(1)主要品種の栽培特性
 「キノブラン」と比較して「カナリーダイヤモンド」は、高温期である6月に定植すると抽台率がやや低下し、収量は劣ったが、切り花品質はどの定植時期でも優れた。「キノルージュ」は、高温期である6月や7月上旬に定植しても抽台率が安定して高く、また定植後2回目の採花ピーク時の花(二番花)の収量が多かった。「スーパールビー」は、5月定植でも抽台率が不安定であったが、切り花品質は優れた。越冬性および定植2年目の収量や切り花品質は、「キノブラン」が最も優れた(表1)。

表1 主要品種の栽培特性

(2)切り花品質向上に向けた遮光処理
 5月に定植して7月下旬から8月上旬に1回目の採花ピークが来る作期で、8月に遮光処理を行うと、9月~10月上旬に採花する二番花では、2LやLといった高規格の採花本数が増加し、切り花品質も向上した。また、日照不足であった2009年でも効果があった(表2、図1)。 経済性試算の結果より、粗収入額-直接経費は無処理区より遮光処理を行った区で多くなり、収益性は向上した(表3)。

表2 8月の遮光処理が秋の切り花品質に及ぼす影響(5月定植、二番花)


図1 8月の遮光処理が秋の規格別収量に及ぼす影響(5月定植二番花、2か年平均)

表3 遮光処理の経済性試算(円/10a)

 7月上旬に定植して、抽台1~2週間前である8月に遮光処理を行うことで、「キノルージュ」で9月中旬~10月上旬に採花される定植後1回目の採花ピーク時の花(一番花)では、切り花品質は向上した。しかし、日照不足であった2009年ではその効果が弱く、規格内採花本数が2か年とも減少した(表4)。

表4 8月の遮光処理が夏秋期の切り花品質に及ぼす影響(7月上旬定植一番花、品種「キノルージュ」)

(3)越冬株の管理法
 越冬作型の「キノブラン」において、融雪後に株を地際で刈り込むことにより、前年4、5、6月の全ての定植月で採花できる株が多くなり、規格内採花本数も増加したことから、安定的な切り花生産が可能となった。到花日数(平均採花日までの日数)は前年4月定植では長くなったが、前年5月、6月定植では刈り込みによる差はみられなかった(表5)。

表5 前年定植月と融雪後刈り込みが越冬株に及ぼす影響(品種「キノブラン」、2か年平均)

4 成果の活用面と留意点

(1)シネンシス系スターチスの夏秋期の切り花品質向上および越冬作型における切り花安定生産のための資料とする。

(2)越冬作型については滝川市での結果であることを考慮する。

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大粒・多収で病気に強い小豆新品種「十育155号」

北海道立十勝農業試験場 作物研究部 小豆菜豆科

1.はじめに

 水田転換畑を多く抱える上川・留萌、石狩・空知、後志、胆振・日高等の地域における小豆の作付面積は、全道の小豆作付面積の約4割を占める。これらの地域の小豆は、登熟期間が比較的高温なため、粒大が小さく、種皮色が濃くなる傾向があり、流通・加工業者の評価が道東産に比べて低い。特に高温年においては、著しい小粒化による収量・品質・調製歩留まりの低下が問題となることがある。また、転換畑地域は排水不良圃場が多いため茎疫病等の被害も多い。一方で、冷害による被害は少ないため、北海道全体での小豆の安定供給における重要性は高く、これらの地域で収量・品質、耐病性が優れ、安定性の高い品種の育成が切望されている。

2.育成経過

 小豆「十育155号」は、落葉病(レース1)・茎疫病(レース1)・萎凋病抵抗性の「十育137号」を母、落葉病(レース1)・茎疫病(レース1、3)・萎凋病抵抗性の「十育140号」(後の「しゅまり」)を父として平成10年に十勝農業試験場で人工交配を行ない、F5世代以降は道立中央農業試験場においても供試し、道央以南向けの特性を重視して選抜、固定を図ってきた。

3.特性の概要

(1)形態的特性
 主茎長は「エリモショウズ」より長いが、主茎節数は同等で、上位節間が伸長する。分枝数、一莢内粒数は「エリモショウズ」と同等、子実の形は「エリモショウズ」と同じ“円筒”である(表1、2)。

表1 育成地および普及見込み地帯における試験成績

表2 その他の特性

(2)生態的特性
 開花期は「エリモショウズ」よりわずかに遅いが、同品種と同じ“中”、成熟期は「エリモショウズ」よりやや遅く、“中”である(表1)。
 子実収量は「エリモショウズ」に比べて多い。落葉病抵抗性、萎凋病抵抗性は「しゅまり」「きたのおとめ」と同じ“強”、茎疫病抵抗性は「しゅまり」と同じ“かなり強”である。低温抵抗性は「エリモショウズ」の“中”、「しゅまり」の“弱”に対し、中間の“やや弱”である。倒伏抵抗性は「きたのおとめ」と同じ“中”である(表1、2)。

(3)品質特性
 子実の大きさは「エリモショウズ」より大きく“中の大”に属する。種皮の地色は「エリモショウズ」と同じ“淡赤”に属するが、同品種に比べ淡く、アンの色調も「エリモショウズ」より明るい。種皮歩合は「エリモショウズ」の“中”に対して“低”であり、アン粒子径は「エリモショウズ」に比べやや大きい(表2、3)。
 加工製品の試作試験では、同産地の「エリモショウズ」と比較して同等からやや優ると評価された例が多かった(表4)。

表3 十勝農試産と中央農試産による種皮色、生アン色、アン粒子径(平成19、20年の平均)

表4 製品試作試験の概評一覧

4.普及態度

 本系統は土壌病害と小粒化・濃色化が問題となっている地域の「エリモショウズ」およびその他品種の一部に置き換えて普及する。

(1)普及見込み地帯
 道央以南における早・中生種栽培地帯(道央、Ⅱ-2)、中生種栽培地帯(Ⅲ)、中・晩生種栽培地帯(Ⅳ)およびこれに準ずる地帯

(2)普及見込み面積 3,600ha

(3)栽培上の注意事項
 落葉病、茎疫病(レース1、3)、萎凋病に抵抗性を持つが、栽培に当たっては適正な輪作を守る。


図1 「十育155号」の普及見込み地帯における「エリモショウズ」との子実重比及び成熟期の差

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期待の樹種!新しいブルーベリーの品種

北海道立中央農業試験場 作物研究部 果樹科

1.試験のねらい

 ブルーベリーは果実の機能性が注目され道内でも栽培が増加しており1995年には10haだった栽培面積は2007年には24haと増加している。ブルーベリーの種苗は海外育成された品種や府県で育成された品種など、多くの品種が種苗業者から容易に購入することができる。しかし、収穫期や耐寒性、果実品質など本道における特性についての情報が少なく、品種を選択するための本道における品種特性情報が求められている。そのため、本試験では新しく導入したブルーベリー品種等について、耐寒性・収量・収穫期・果実品質などの特性を明らかにし、品種選択の際の資料とすることを目的とした。

2.試験の方法

(1)試験場所:中央農試(長沼町)

(2)供試品種:19品種

(3)参考品種:「ウエイマウス」、「ジューン」、「ランコカス」、「ハーバート」(1974年北海道優良品種)

(4)供試樹数:1~5樹/品種

(5)栽植距離:4.0m×1.5m (167樹/10a)

(6)調査項目:生育相、樹体生育、収量、果実品質、日持ち性、耐寒性等

3.試験結果

(1)ブルーベリー19品種について各種特性から総合評価を行い、4品種を有望、9品種をやや有望とした。

(2)有望とした品種の概評は以下の通りである。

 1)「プル」:
 樹体生育は中で、樹姿は中間。凍害の発生は少ない。7月下旬から収穫となる品種で、成木期の1樹収量は1.3kg程度。果実重は平均で2gを超え揃いは良い。糖度は高く食味はやや良く、日持ち性はやや良い。

 2)「レカ」:
 樹体生育は良く、樹姿はやや直立で凍害の発生は中程度。7月下旬から収穫となる品種で、成木期の1樹収量は3kgを超え多収。果実重は平均で2gを超え揃いは良い。糖度は中で酸はやや多く、食味は中、日持ち性は良い。

 3)「ノースランド」:
 樹体生育は良く、樹姿は中間。凍害の発生は中程度。7月下旬から収穫となる品種で、成木樹の1樹収量は2.7kg程度と多収。果実重は平均で1.4gとやや小さいが揃いは良い。糖度は中程度だが酸味が少なく食味はやや良く、日持ち性はやや良い。

 4)「バークレイ」:
 樹体生育は良く、樹姿は中間。凍害の発生はやや少ない。8月上旬から収穫となる品種で、成木樹の1樹収量は1.7kg程度とやや多収。果実重は平均で2.4gと大きく揃いは良い。糖度は中程度だが酸味が少なく食味はやや良く、日持ち性はやや良い。

(3)果実品質、日持ち性等に優点の認められる「シェラ」、「デューク」、「トロ」、「ヌイ」、「ハリソン」、「スパータン」、「ダロー」、「ブルークロプ」、「ブルーヘブン」をやや有望とした。

(4)「ノースブルー」、「パトリオット」、「ブルーチップ」、「ブルーレイ」は有用な特性を有するが樹体生育や収量性に欠点が認められた。

(5)「ブリギッタ」、「ブルータ」は耐寒性や収量性など、いくつかの欠点があり、本道での栽培には適さないと評価した。

表1 各品種の概要


表2 各品種の評価

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期待の樹種!新しいプルーンの品種

北海道立中央農業試験場 作物研究部 果樹科

1.試験のねらい

 プルーンはその栄養価の高さから“ミラクルフルーツ”とも呼ばれ健康食品として注目され、ドライフルーツのみならず生食での評価が高まっている。プルーンは耐寒性に優れ寒冷地での栽培に適しており、北海道における栽培面積は23.0ha (1990年)から113.3ha(2007年)と著しく増加している。プルーンは本格的な栽培が始まってから年数が浅いこともあり、本道における品種特性や栽培に関する試験研究に乏しく、品種の特性が十分に把握されていない。そこで、現地で導入され始めた品種を中心としたプルーン12品種について、幼木期から若木期までの生育相・収量・果実品質などの特性を明らかにし、生産者の品種選択の際の資料とすることを目的とした。

2.試験の方法

(1)試験場所:中央農試(長沼町)

(2)供試品種/台木:12品種/共台

(3)供試樹数:1~5樹/品種

(4)定植:2000年に2年生苗を購入し、ほ場に仮植えした。それらの苗木を2002年4月(樹齢4年生時)に定植した。栽植距離は6.0m×5.0m。

(5)調査項目:生育相、樹体生育、収量、果実品質、裂果等

3.試験結果

(1)プルーン12品種について各種特性から総合評価を行い、3品種を有望、4品種をやや有望とした。

(2)有望とした品種の概評

 1)「ベイラー」:
 収穫期は9月下旬~10月上旬である。樹姿は開張で、幹周は大きい。短果枝の着生は多く、やや多収である。樹齢が進むにつれ、樹体の生育が低下する傾向が認められた。果実重は53g程度で中玉である。果皮色は青紫~黒紫色である。肉質良く、糖度が高く、食味は良好である。収穫期の落果や降雨による裂果の発生は少ない。

 2)「マジョリース」:
 収穫期は10月上旬である。樹姿は直立~やや直立で、樹勢はやや強く幹周は大きい。短果枝の着生がやや多く、やや多収である。果実重は50g程度で中玉である。果皮色は紅紫色である。糖度がやや高く食味は良好である。収穫期の落果が少ない。自家和合性を有する。

 3)「プレジデント」:
 収穫期は10月中旬である。樹勢がやや強く、幹周は大きい。果実重は約75gと大きく、収量性も高い。果皮色は紅紫色である。糖度がやや高く、食味は良い。収穫期の落果や降雨による裂果の発生が少ない。

(3)やや有望と評価した品種の概評

 1)「トレジディ」:
 酸度が高いが食べたときの酸味は少ない。収穫期の落果が少ない。

 2)「パープルアイ」:
 果実重は約75gで大果である。食味は良いが、食味の揃いがやや劣り、糖度が低い果実では酸味を強く感じ評価が劣ることがある。

 3)「サンプルーン」:
 肉質が良く、糖度が高く、食味は良い。開花期が遅いため、他品種の受粉樹としてはやや不向きである。

 4)「スィートサンプルーン」:
 収「サンプルーン」から甘味の高い系統として選抜された品種。果実品質を含めた品種特性で「サンプルーン」と同等。

用語解説

(1)プルーン:スモモの仲間に属する果樹。スモモには大きく3つのグループ(ユーラシア系、東アジア系、北アメリカ系)があり、そのうちユーラシア系のドメスチカスモモをプルーンと呼んでいる。(ドメスチカスモモの内のドライフルーツに適するグループを指す場合もある。)

(2)共台:接ぎ穂と台木が同一の種(ここではプルーン)である場合「共台」と呼ぶ。

表1 各品種の概要

表2 各品種の評価

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平成21年度の発生にかんがみ注意すべき病害虫

北海道病害虫防除所、道立各農業試験場 病虫科

1.試験目的

 平成21年度に実施した調査および試験研究結果から、特に留意を要する病害虫について注意を喚起する。

2.平成21年度にやや多~多発した病害虫

1)水稲:いもち病(葉いもち、穂いもち)

2)小麦:眼紋病(秋まき小麦)、赤かび病(秋まき小麦、初冬まきの春まき小麦)

3)大豆:マメシンクイガ

4)小豆:落葉病

5)菜豆:菌核病、灰色かび病、タネバエ

6)ばれいしょ:疫病、粉状そうか病

7)たまねぎ:白斑葉枯病、軟腐病、タマネギバエ、ネギアザミウマ

8)ねぎ:ネギアザミウマ

9)だいこん:キスジトビハムシ

10)りんご:モモシンクイガ

3.平成22年度に特に注意を要する病害虫

(1)水稲のいもち病
 平成21年は7月中旬以降に低温・寡照・多雨の影響を強く受けたため、水稲のいもち病が多発した。発生程度の差は地域だけではなく、ほ場単位で見られるとの指摘があることから、天候不順により適期防除ができなかったり、薬剤防除を実施しなかった事例もあると思われる。
 平成22年の作付けでは、前年の多発により、いもち病の感染源である保菌したわらやもみ殻が、育苗ハウス及びほ場周辺に例年より多く残っていると考えられる。これらの処分を徹底すると共に、育苗ハウス内及び周辺での再利用は行わない。また、しろ掻き後に畦畔にあげた前年の残渣や取り置き苗の処分は早期に実施する。薬剤防除はほ場観察を行い適切に実施することが重要である。

写真1 水稲のいもち病

(2)秋まき小麦の眼紋病
 眼紋病は土壌病害であるが、小麦の連作により発生が顕在化している地域があり、倒伏に至るほ場が目立っている。
 本病の発生を回避するためには、連作を避け、3年以上の輪作体系を維持することが最も重要となる。また、播種適期と適正な播種量を守るとともに、ほ場の排水性を改善することも防除対策として有効である。地域によってはやむを得ず薬剤防除が行われているが、近年使用実績の高いシプロジニル水和剤に一部地域で感受性の低下した菌が認められるようになり、防除効果の上がらない事例が報告されている。やむを得ず薬剤を使用する場合には、倒伏しないほ場管理と栽培を心がけるとともに、発生状況を勘案して適切な薬剤を選択する必要がある。

4.新たに発生を認めた病害虫

(1)秋まき小麦の眼紋病(耐性菌の出現)

(2)大豆の苗立枯病

写真2 大豆の苗立枯病

(3)トマトの葉かび病(新レース)

写真3 トマトの葉かび病(新レース、「麗夏」)

(4)きゅうりの褐斑病(耐性菌の出現)

(5)メロンの黒点根腐病

(6)メロンのエンマコオロギ類

(7)しろうりの黒星病

(8)かぶの根腐病

写真4 かぶの根腐病

(9)かぶのアシグロハモグリバエ

写真5 かぶのアシグロハモグリバエ

(10)にんじんの黒斑病

(11)みつばの株枯病

(12)フリージアのモザイク病

(13)ストックの斑紋病

(14)すずばらのオオバラクキバチ

(15)とりかぶとのトリカブトハモグリバエ

(16)りんごの炭疽病(病原の追加)

写真6 りんごの炭疽病

(17)マルメロの炭疽病

(18)ハスカップのコオノオオワタムシ

 詳細ついては、北海道病害虫防除所のホームページ)でもご覧いただけます。

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渡島管内における「マメシンクイガ」の発生実態

渡島農業改良普及センター 畑作担当者会議

1.背景と目的

 北海道では近年マメシンクイガの発生が増加し、2006年以降は20%以上を超える発生面積率となっている。渡島管内でも2008年に管内全域で甚大な被害がみられた(図1)。北斗市の聞き取り調査では、それまでマメシンクガの被害は少なく防除対象とされていなかったことや大豆の連作により被害が多発していることがわかった。


図1 マメシンクイガの被害状況

 マメシンクイガの被害は、幼虫が莢の中でマメを食害するため、外観からは加害状況がわからず、収穫後に被害粒として確認されるため、防除時期の把握が難しい害虫である(写真1、2)。
 今年度も被害の拡大が予想されたため、防除の徹底を図るとともに、発生実態の把握と被害解析を行った。

   
写真1 マメシンクイガの老齢幼虫  写真2 マメシンクイガの中齢幼虫

2.調査の概要

(1)フェロモントラップ誘殺調査
 7月下旬に、フェロモン製剤(実用化検討中)を貼り付けた武田式粘着トラップを知内町、北斗市、森町、八雲町の大豆ほ場に設置した(写真3)。
 成虫の発生消長は5~7日毎に誘殺頭数を調査した。また、調査ほ場での大豆の開花期と着莢期を調査した。


写真3 フェロモントラップ設置状況

(2)産卵状況調査
 着莢期以降にフェロモントラップ調査とあわせて、100~300の莢に生み付けられた卵数を調査した。

(3)防除及び被害実態調査
 知内町、北斗市、八雲町の各5~14ほ場を対象に、被害粒調査を行った。併せて、防除実施状況について聞き取り調査を行った。

3.結果と考察

(1)フェロモントラップ誘殺調査
 全地点でマメシンクイガの誘殺があり、フェロモントラップの有効性が認められた。フェロモントラップは従来の調査法(たたき出し)より、簡便な予察法と思われた。
 発生消長は調査地点により、最盛期の誘殺数に差はあるが、同様の傾向を示した(図2)。


図2 各地のフェロモントラップ誘殺数

 誘殺始はおおむね8月3半旬で、盛期は8月5半旬(5地点平均)となっていた。これは、道内の他地区に比べてやや遅い傾向であった。
 また、フェロモントラップの誘殺盛期は開花期の5~6半旬後、着莢期の2~3半旬後であった(表1)。

表1 大豆の開花期・着莢期とフェロモントラップ誘殺数の関係(H21)

(2)産卵状況調査
 産卵は全地点で確認された。産卵の初確認は8月15日~9月2日の間で、管内平均は8月5半旬であった。また、知内町、八雲町での産卵始めは、地区や品種によらず同時期であった(表2)。

表2 大豆の開花期・着莢期と産卵数の関係

(3)防除及び被害実態調査
 調査を行ったほとんどの農家で防除が行われており、被害粒率は2008年よりも低くなった(図1)。しかし、防除効果が得られない事例がみられ、防除方法の問題やほ場環境による影響があると推察された(図3、写真4)。


図3 防除と被害粒率の関係(H21:北斗市)


写真4 雑草のため空散防除を実施したほ場

4.まとめ

 道南でのマメシンクイガ発生消長は、管内でほぼ同様の傾向であった。
 成虫の飛来や産卵時期と、大豆の開花期や着莢期との関係がうかがえた。
 各地区とも防除が行われたことで、前年より被害粒率は大幅に低下した。しかし、一部で防除効果が得られない事例もあった。

5.今後の対応

 渡島では、大豆ほ場(転作田)が散在するため、一斉防除など地域的な取り組みが望まれる。今後もマメシンクイガの発生生態について調査し、効果的な防除対策(防除適期の予測)を検討していきたい。

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檜山管内における天候不順に対応した現地事例

檜山支庁営農技術特別指導チーム

1.事例調査の背景と目的

  平成21年は低温、寡照、大雨などの不順な天候が続き、特に7月は断続的な降雨で月間降水量412mm、平年比380%(厚沢部町鶉アメダス)を記録するなど、農作物に大きな被害を及ぼした。
 しかし、厳しい気象経過にあっても、日頃からの土づくりや排水対策、適期作業の実践を含めた基本技術の励行によって、平年並みの収量・品質を確保している優良事例も多くみられた。
 農業者の実践事例を整理することで、今後の気象災害への活用や営農技術向上の一助とする。

2.農業被害の概要と農作物の生育経過

 檜山管内7町合計で被害面積10,039ha、被害額10.8億円と大きな被害となった(表1)。
 主要農作物の中では、特に水稲、小豆、サイレージ用とうもろこしで7月以降に生育の遅延が顕著であった(表2)。

表1 檜山館内の農業被害

表2 生育遅延が顕著であった作物の生育経過

3.営農技術特別指導チームの対応

 道南農試技術普及部、檜山支庁、檜山農業改良普及センターで構成する、檜山支庁営農技術特別指導チームを設置し、被害状況の把握と現地指導および技術情報資料の発行を行った(表3、4)。

表3 檜山支庁営農技術特別指導チームの動き(抜粋分)

表4 技術情報の発行(抜粋分)

4.天候不順に対応した現地事例の収集

 被害状況の把握と現地指導を進めていく中で、普及センターが中心となって、農業共済組合や農協の協力を受け、優良な現地事例を農業者から直接聞き取りしながら10作物18事例を収集し、取りまとめた(表3)。

5.農業被害の概要と農作物の生育経過

 檜山管内7町合計で被害面積10,039ha、被害額10.8億円と大きな被害となった(表1)。
 主要農作物の中では、特に水稲、小豆、サイレージ用とうもろこしで7月以降に生育の遅延が顕著であった(表2)。

(1)迅速かつ的確な技術・作業による対応事例
 1)水稲「徹底した水管理で不稔軽減
 冷害危険期の深水管理と早朝入水・日中の止水管理、ケイ酸資材の施用などにより、不稔歩合は2割以上低下し、減収を防いだ(表5)。

表5 H農場と地区対象の収量比較

 2)秋まき小麦「早刈りで1等麦を生産」
 収穫前の天気予報に注意を払い、わずかな降雨の合間で早刈りし、1等麦生産を達成した。降雨が続き、収穫が遅れた檜山南地区全体の収穫時期より7~10日早く収穫したことと的確な施肥管理の実施がその大きな要因であった(図1)。


図1 収穫作業の経過と収穫時期の降水状況

 3)小豆「葉面散布による追肥で収量確保」
 ほ場の土づくりを基本として、天候回復後の着蕾期以降に生育経過を見ながら葉面散布による追肥を実施し、檜山南地区平均の2倍となる収量を確保した(表6)。

表6 N農場と地区調査平均の収量比較

 4)ブロッコリー「施肥・防除管理の徹底で安定生産」
 天候不順による花蕾腐敗病の発生はみられたが、草勢維持に向けた施肥管理、適切な防除、収穫調製の徹底によって、高品質で安定した継続出荷ができた(図2)。


図2 K農場と地区全体のブロッコリー秀品率の推移

(2)排水対策や土づくりによる対応事例
 1)大豆「排水対策と土づくりで収量向上」
 火山灰暗きょの実施とサブソイラを入れたことで透排水性の改善が図られ、生育は旺盛で莢数も多く、収量は4俵/10aを確保した(表7)。

表7 E農場と地区調査平均の収量比較

 2)小豆「排水対策と輪作・土づくりで収量向上」

 4年輪作を基本に堆肥施用による土づくりと最終培土までに畦間サブソイラを入れて透排水性を確保したことで、天候不順の影響を最小限に抑え、町全体収量よりも約8割増の収量を確保した(表8)。

表8 I農場と町平均の収量比較

6.今後の対応

 本現地事例については、管内の関係機関や各生産組織への研修会・講習会等に活用していく。
 また、今後類似した気象災害の技術対応に活用する。

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